光に抱きかかえられるソフィー 光VS宮本師範
「あ・・・」
「人差し指で・・・」
「竹刀の先を止めている」
「ソフィーさん、そこから進めないし・・・」
「ヒイハアしているの、ソフィーさんだよ・・・真っ赤になっている」
信じられないことに、光はいつの間にか立ち上がり、右手の人差し指で、ソフィーの竹刀の先端を止めている。
ソフィーとしてもまったく信じられないのか、顔が真っ赤、身体全体が震えている。
ただ、ソフィーと体育館内の剣士たちには、もっと驚くことが起きた。
真っ赤になって震えているソフィーを、光が抱きかかえたのである。
「わ・・・光君、恥ずかしいよ」
やっと、ソフィーの口から光に聞こえる言葉が出た。
しかし、途切れ途切れになっている。
「あのね、ソフィー、突然、そんなことしないで、みんな驚いちゃっている」
「ソフィーが、震えているから抱きかかえたんだよ」
「腰を抜かせるわけにはいかないでしょ」
光は、ソフィーの耳元で、ささやいた。
「うーん・・・」
「凄すぎ・・・」
「ソフィーさんの竹刀を人差し指で受け止めるなんて」
「何て名前の選手?」
「見たことないよ、どこの県?」
「でも、私も抱きかかえられたい」
「いや、あなたは身体大きすぎ、あの男の子、華奢だから私ぐらいがいい」
特に女子高校生の剣士から「光争奪バトル」の声が聞こえて来る。
「竹刀を持たせたら、どうなるんだろう」
「もう、ソフィーさんなんか、引きはがして、練習に参加してもらおう」
そんな高校生剣士の声が大きくなった。
ソフィーが、しばらく立ち上がれなかったこともあり、結局光は、竹刀を持って練習に参加することになった。
「うーん・・・さすが、阿修羅・・・でも抱きかかえられたのは、光君にとする」
まだ身体の熱さが収まらないソフィーは、ニンマリとしている。
さて、光は、準備運動など何もしない。
そもそも、防具をつけない。
「暑苦しいし、見づらくなる、昔の剣道道場では、そんなのなかった」
そんなことを言いながら、神奈川県内の様々な優秀な高校生剣士と立ち会う。
しかし、誰と立ち会っても結果は、光の言う通り、防具など何もいらなかった。
高校生剣士が動き出すと同時に、全て、光の「突き」が相手の喉元にピタリと決まり、相手はそのまま動けなくなってしまうのである。
「ふう・・・」
宮本は、ため息をついている。
「そうですね、やはり、段違いかなあ」
ようやく立ち上がったソフィーが光の剣道を見ている。
「いや、段違いというか、ありえないくらいに相手の呼吸とか、タイミングを読んでいる」
「足さばき、上体の動かし方、なめらかで速い」
「あの突きも、加減しているし・・・」
宮本は、舌を巻いている。
「そうですね、真剣なら即死ですね」
ソフィーも、驚いている。
「いや、真剣でなくても、木刀でも、加減しなかったら、喉を突き抜ける」
宮本は、竹刀を握りしめている。
「先生、立ち会ってみますか?」
宮本の厳しい表情を見て、ソフィーは光との立ち合いを促してみる。
「・・・そうかな・・・勝てる自信はないけれど」
宮本は、決心を固めた。
片手で光に合図をすると、光が頷いた。
「さあ、模範演技、まずは宮本先生と光君といっても、剣道は初心者だけど、だから無名なんだけどね、とにかく足さばきとか身体の動かし方をよく見てね」
ソフィーが高校生剣士たちに声をかけると、全員が壁のところに整然と座った。
中央では、光と宮本が対峙した。
「一本だけですよ」
光は、少し疲れているようだ。
というか、だんだん剣道にも飽きて来たのか、眠たそうな目になっている。
ただ、その「眠たそうな目」が、宮本の闘志に逆に火をつけた。
「えい!」
「おう!」
様々、裂帛の気合で光に様々な攻撃をしかけていく。
しかし、光の身体や竹刀には、カスリもしない。
少なくとも宮本の竹刀の間合いには入っているのけれど、カスリもしない。
「先生、そろそろ終わりですよ」
光は、宮本に声をかけた。
宮本が、驚いた瞬間だった。
宮本の竹刀は、その足元に落とされている。




