阿修羅とマリア様の会話
「そうかあ・・・やりかねないなあ・・・」光
「うん、世界同時の、自爆テロなの」ルシェール
「全ての国?」光
「うん、カトリックの情報だと、ほとんど全ての国の首都かな」ルシェール
「それ以外にもあるんだね」光
「そう、さすが、全ての大きな火山に・・・」ルシェール
「そこに、核攻撃をすると」光
「・・・そうなると」ルシェール
「もし、実行されると、多大な被害どころじゃないな」光
「それでね、告知してからの実行までの時間は、かなり短い」ルシェール
「つまり各国政府に対抗措置を準備する時間を与えず、即時に降伏を強いるのか」光
「何か、方策は?」ルシェール
「いや、それならそれで、大丈夫さ、わかっていれば」
「昨日ね、そこの阿弥陀堂で、打ち合わせもしたよ」
光は、少し笑った。
「さすが・・・阿修羅」
「阿弥陀様と観音様と勢至様ね、対等に話せるなんて阿修羅ぐらいかなあ」
ルシェールは、驚いたような顔になった。
「いや、マリア様には、この子を救ってもらったしね」
「だから、八部衆や、金剛力士、観音様にも声をかけたのさ」
「それから、彼も呼んだ」
「全員、出現したら面白いなあ」
光、いや阿修羅はルシェールに微笑んだ。
ルシェールも、実はマリアの霊が移っているらしい。
「へえ、あの子が来るんだ、それに全員でなんて、面白そうだなあ・・・」
「でも・・・薬師の巫女と導きの巫女が、妬いているから、そろそろ戻りましょう」
ルシェールは、光の手を一旦強く握り、離した。
そして、ソフィーの方に歩いていく。
「うん、そうだね、正月早々・・・」
「あまり、泣かせるのもよろしくない」
光は、にっこりと笑い、楓と華奈を手招きする。
「何だ、二人の話は、単なるあいさつか」楓
「でもさ、あそこまで、もったいつけることないのに」華奈
「ルシェールのチーズで、また太ってしまった」楓
二人とも、多少考え違いをしているけれど、とにかく、落ちついた。
結局、光とルシェールの会話を「読めなかった」二人は、夜にそれぞれの親から、きつく叱られることになった。
昼食は、全員そろって、光家の名物料理パエリャになった。
さすが伊豆の海産物と、主に静岡県東部の肉野菜類を豪快に炊き込んである。
「うん、やはり地産地消だなあ、全ての素材の味が濃いから、同じ料理でも味が違う」
光は、珍しく食が進んでいる。
「そんなこと言うと、ここの跡取りってどう?」
奈津美は、半分冗談で半分本気。
確かに奈津美は、子供がいない。
この温泉旅館の跡取りがいないことも事実である。
「うーん・・・温泉の女将かあ・・・それもいいなあ」
絶品パエリャに舌鼓をうちながら、華奈は、ついついニンマリとしてしまう。
しかし、その不用意な発言はすぐに、他の巫女連中から攻撃を受けることになる。
「そんな、ラーメンのネギを切るくらいでもたついているくせに」春奈
「女将って、大変だよ、料理だけでなくてね」美智子
「接客、語学力、経営全般、統率力、お付き合い、開発力・・・でも、光君とその前にさ・・・」楓は、本当に呆れている。
その他、いろんなことを言われているが、案の定、華奈は途中から何も聞いていない。
「ああいう思いつきの言葉を言って、他の人の忠告を聞かないから、失敗を繰り返すの」
華奈の母親美紀の落胆は、ますます深くなる。
「まあ、でも、みんな十五歳の時ってそんなものさ」
ようやく、ナタリーが助け舟を出す。
「うん、美紀さんは、自分を基準に考えすぎ」圭子
「確かに、美紀さんは、若い頃から美人で完璧タイプなんだけどさ」ニケ
「華奈ちゃんの成長は、みんなでじっくり見守ろうよ」
奈津美の言葉で、美紀の顔が落ち着いた。
「うん、そんなことより、パエリャ美味しいなんてもんじゃないね」
ソフィーも、美味しそうに頬張っている。
「そりゃ、そうさ、史さんと菜穂子さんのレシピだしさ、それに新鮮な魚介類と地産の材料だもの」
ニケもうれしそうである。
「本当に菜穂子姉さんの味付けってさ、美味しかったなあ」
奈津美は、少し下を向き、涙ぐんでいる。




