穏やかなお正月と華奈
「うん、穏やかなお正月だこと」
圭子は、目を細めている。
大広間の大きな窓から、穏やかな駿河湾と雪をかぶった富士山が見えている。
「このおせちも、和食の極みだね」
美智子は満足そうに、おせちを食べている。
「うん、光君に、一人きりのお正月はさせたくなくてね」
春奈は、今朝は光の右隣に座った。
少し寝坊した華奈は、渋々末席に座ることになった。
「こういうチャンスを逃すから・・・」
美紀は華奈に呆れながら、ちゃっかり光の左隣に座っている。
「でもさ、光君が言っていたけれど、このお雑煮最高だねえ」
美智子は魚介類の出汁がしっかりと効いたお雑煮を食べている。
「うん、複雑なそれでいて、すっきりとした旨み、これは奈津美叔母さんの味、母さんもこれだけは真似出来ないって言っていた」
光は、目を閉じてお雑煮を、しみじみ味わっている。
「そうかあ・・・あの料理上手の菜穂子叔母さんが出来ないって言うぐらいか・・・でも、本当に美味しい」
楓も気に入ったようである。
「私も、はやいところ、習わないとなあ」
華奈のつぶやきは、誰からも無視された。
「それ以前っていうかさ」楓
「・・・歌と料理に関しては、沈黙すべきだ」春奈
「美紀さんも、苦労するねえ」美智子
「一から教え直さないとなあ」美紀
「全員で強化合宿するとかさ」圭子
「華奈ちゃんの、料理のために?」
奈津美は、目を丸くする。
「うん、でも、そうしないと、由香利さん、由紀さんとか奈良町以外の巫女に光君が取られる可能性が高い・・・それと、ルシェールとかソフィーだと日本から光君いなくなっちゃうかも」楓
「可能性高いなあ、本当に」美智子
「うーん・・・そうだねえ・・・それもねえ・・・」美紀
「私もなるべく奈良町系がいいなあ」奈津美
「でも、華奈ちゃんを仕込むの大変だよ」
楓は、難しい顔になった。
華奈は、そんなことを言われて、抗弁もできず、口がへの字になっている。
「ああ、でも、どうしてもっていうなら・・・」
春奈は、何か考えがあるようだ。
「どうするの?」
圭子は、少し首を傾げる。
「まだ、私が残っているから、取られなくて済む」
春奈は、「仕方ないから」、名乗り出てみた。
それほどまでに、華奈の教育は困難を極めると思っているようだ。
・・・しかし・・・
「料理実習だけ任せます」楓
「そう、何度もいい思いはねえ」圭子
「ねえ、いい線はいっているんだけど」奈津美
結局、春奈の「名乗り出」は、巫女軍団から、軽々とスルーされている。
その後は全員でお散歩となった。
「うん、伊豆って暖かいな」華奈
「そうだねえ、奈良の底冷えのする寒さと比べればね」奈津美
「へえ、船が出ている、何か釣れるのかな」
華奈は海に浮かぶ漁船を見ている。
「華奈ちゃん、泳いでみたら?」
春奈は、朝食時の「簡単なスルー」を根に持っていた。
だから、どうしても華奈にツッコミを入れる。
「え?どうして?」
華奈は、春奈の意図はさっぱりわからない。
「光君に釣り上げてもらうのさ」
それでも、華奈の母美紀が、少しだけ反応する。
「へえ、いいなあ・・・でも魚じゃないし」
華奈は、泳ぎには自信がない。
「そこで、変にためらうから、うまくいかないの」美智子
「華奈ちゃんが、捕まえちゃうしかないかなあ、強引にでも」奈津美
「そうだねえ、早くしないとね」圭子
「うん、今日はナタリーとルシェール、ニケとソフィーも来る」春奈
「今しかないなあ、チャンスは」奈津美
華奈は、いろいろ「けしかけられ」顔を赤くしている。
しかし、光に近づく「一歩」を踏み出せない。




