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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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阿修羅と阿弥陀三尊との会話

光は、すぐに露天風呂には入らず、広い庭を散歩することにした。

様々、趣向を凝らした石の配置を見ながら、庭の奥に進むと、古ぼけた小さなお堂が見えて来た。


「へえ・・・いつの時代なんだろう・・・伊豆もけっこう歴史があるな」

「それに、よくこんな古いお堂を残したなあ・・・父さんは何か考えがあるのかなあ」

「せめて、作った時代だけでもわかるといいなあ」

光は、その小さなお堂の古さに、強い興味を感じた。

何とか、時代を知りたいと、お堂の裏に回ってみることにした。


「へえ・・・霊亀元年って・・・そんなに古いんだ」

光は、本当に驚いた。

お堂の裏面の礎石に、確かに「霊亀元年」の文字が彫り込んである。

西暦で言えば、七百十五年、今からならば、千三百年前になる。


「お堂の中は、どうなっているんだろう」

光は、どうしてもお堂の中が見たくなった。

まるで引き寄せられるかのように、お堂の扉に手を触れた。


「でも、鍵がかかっているから、無理かな」

確かに、しっかり重たそうな南京錠がかけられている。

「奈津美叔母さんに言って、開けてもらおうかなあ」

そう思って、あきらめた瞬間


「え?」


光は、目を疑ってしまった。

しっかりとした南京錠が、突然ガチャンとはずれ、お堂の扉が開いたのである。


「どういうこと?」

光が、薄暗いお堂の中をのぞきむと、何か、像のようなものが立っている。

「霊亀元年って、どんな像かなあ」

「お堂を作るのは、何か、仏像とか神像を置くためだし」

光は、お堂に入ってみることにした。

ただ、万が一も考え、お堂の扉は開け放したままにした。


「へえ・・・阿弥陀三尊か・・・案外しっかり作ってあるなあ」


阿弥陀三尊は、仏教における仏像安置形式の一つ。

阿弥陀如来を中央に、その左に観音菩薩と、右に勢至菩薩を配する三尊形式。

観音菩薩は阿弥陀如来の「慈悲」をあらわす化身とされ、勢至菩薩は「智慧」をあらわす化身とされる。

光自身は、それほど仏像には詳しくないけれど、さすがに興福寺国宝館に通い詰めた経験や、そもそも我が国最古の仏教寺院の伝統を継ぐ奈良町元興寺のお坊さんとは、子供の頃から親しく話をして来た。

そのため、阿弥陀三尊ぐらいは、すぐに見分けることが出来た。


「でも、こうやって一人でお堂に入ると、逆に仏像から見られているような変な感じがする」

「どうせ、身体の中には、阿修羅君がいるんだし、これ以上ここにいても、薄気味悪いだけだ、さっさとお風呂でも入ろうかな、ついでにビールも飲んじゃおうかな」

そして、光がお堂を出ようと、その入り口に向かった時に「異変」がおきた。


「え?何?」


光は、久しぶりにビリビリ感を感じてしまった。

このビリビリ感は、夏に春奈と楓と、興福寺国宝館で地蔵菩薩立像を見て以来のもの。


しかも、そのビリビリ感は、光の背中から全身に伝わって来る。

「特に古い仏像を見て、ビリビリする時は、その仏像が何かを言いたい時だよ」

光は、かつて、春奈に聞いた言葉も思い出した。


「しょうがないなあ・・・いったい、何?」

光は、再び阿弥陀三尊に向き直った。


「うーん・・・さっきと違って、仏像の目が光っているし、何か用?」

光は、ここで念仏を唱えても仕方がないと思った。

既に、阿弥陀三尊の目が光っている以上、何かそういった不思議なことでも起こる、あるいは何か指示とかお願いとかされると思った。

とにかく、何も悪いことはしていないのだから、怒られることはないと思っている。

お堂の鍵が、自然に開いてしまったのも、おそらく自分に用事があるのだと理解した。


「ああ、光君、驚かせてごめん」

突然、阿弥陀如来の口が開いた。


そして、阿弥陀如来が、少し背伸びをした後、台座を降りて来た。

「何しろ、ずっと立ちっぱなしだからさ、たまには」

阿弥陀如来は、少し笑っている。

阿弥陀が手招きをすると、観音と勢至の両菩薩も、背伸びをした後、台座を降りて来た。


「ふん・・・」

いつの間にか光は、阿修羅に変化している。

少し、思惑があるような目で、阿弥陀如来を見た。


「確かに人が多すぎると、なかなか変化も出現も、しづらいなあ」

阿修羅はクスッと笑う。


「そうですね、地蔵さんなら、そこまで神経はつかわないけれど、阿弥陀の立ち位置だとね」

阿弥陀は、自由に動ける地蔵がうらやましいようだ。


「それは、観音も勢至も同じだね」

阿修羅は観音菩薩と勢至菩薩を見た。


「はい、観音様もかなり人気なんだけど、とにかく優しいしね」

勢至菩薩の口からも言葉が出た。


「ああ、それでも、地蔵さんの行動力にはねえ・・・」

「それもあって、私の巫女として、ソフィーを送り込んだけれど」

観音菩薩は、少し悔しそうな顔になっている。

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