温泉旅館に到着
叔母奈津美の温泉旅館は西伊豆の温泉街の中でも、少し高台の場所にあった。
旅館に着くなり、華奈が大騒ぎをはじめた。
「わーーー豪華!」
「広いし、あ、海も富士山も見える!」
「ここなら、光さんとお忍びで来たいなあ!」
いつもの大声三連発となった。
これには、母の美紀は顔を真っ赤にして下に向け、春奈は華奈お尻をひっぱたきたくなったが、必死にこらえている。
奈津美は笑いながら、ようやく華奈に諭している。
「あのね、華奈ちゃん、お忍びって、人前で大声で言うもんじゃないよ、そもそもね、お母さんも春奈さんもいて、しかも、私の旅館で・・・」
ただ、奈津美の「諭し」も、そこまでだった。
華奈は、「お土産物コーナー」の試食品に光を引きずっていくし、奈良からの巫女集団も、ほぼ同時に到着したのである。
「はい、圭子姉さん、美智子さん、あ、楓ちゃん、お久しぶり」
奈津美が満面の笑みで、奈良からの巫女集団を迎えると、圭子がまず奈津美の手を握った。
「ねえ、奈津美さん、本当にありがとう、史さんが、あてにならないものだから、無理言って・・・」
さすが、圭子である。
しっかりと頭を下げる。
「いえいえ、圭子姉さん、私はうれしくて仕方ないの、本当、毎年でもいいよ、こんなにうれしいんだから」
奈津美は、圭子としっかり抱き合った。
本当に、久しぶり、奈良町の心と心が触れ合っているらしい。
二人とも、涙ぐんでいる。
「ああ、美智子さんも、お久しぶり、姉さんの時は本当に迷惑かけました」
「それから、春奈ちゃんには、光君が本当にお世話になって」
奈津美は、美智子に頭を下げた。
「いえ、こっちこそ、本当に救えなくてごめんなさい、今でも後悔だよ・・・」
「本当に光君の、大泣きになっている顔が、忘れられなくてさ」
「春奈なんかじゃなくて、私が光君と一緒に住みたいぐらいだよ」
美智子も、奈津美と抱き合っている。
「ああ、ごめんね、楓ちゃん、挨拶遅れて・・・」
「でも、本当に大きくなったねえ・・・」
奈津美は、楓の頭をなでている。
「奈津美叔母さん、子供の頃からずっと、会うと頭なでてくれるね、懐かしいなあ」
「母さんなんて、絶対してくれないしさ、今日から奈津美叔母さんの娘になるかなあ」
楓もうれしそうな顔になる。
ただ、すぐに奈津美から目を離した。
楓の視線の先には、お土産物コーナーで、試食品を食べている華奈と、ボンヤリ顔の光がいる。
途端に、楓の、「のど」が鳴った。
そして、楓もお土産物コーナーに歩き出そうとするが、即座にけん制がかかる。
「やせたいんだよね・・・」春奈
「サウナの時間伸ばさないとね、暑いの弱いくせに」圭子
「あの、お尻、もみほぐすの大変かなあ」美智子
「圭子姉さん、スタイルはきれいなのにね、楓ゃんのガッチリ体型は、史兄さんみたい」奈津美
しかし、そんなけん制の声は、一定の効果しかなかった。
結局全員が、「味見」で、お土産物コーナーを楽しんだのである。
「さて、それでは、史兄さんの設計の離れに」
奈津美は自分も含めて、土産物コーナーを楽しんだ後、全員を離れへと案内した。
「うわー・・・すごいお庭」春奈
「和風の極み・・・」美紀
「これ、紅葉とか桜の時期だと、いいなあ・・・」美智子
「本当、渡り廊下もゆったりとして、歩いているだけで癒される」圭子
「史兄さんも、いろいろ悩んでいたけれど、どうしてもって、この設計」奈津美
「石の配置も、しみじみ系」春奈
「本当、華奈にはもったいない、価値がわからないかも」美紀
「うん、それを言ったら、楓は山道ダッシュを課すかなあ」圭子
結局、娘への文句がはじまる母である。
「・・・どうして、母親ってさ、ああ、性格と口が悪いのかなあ」華奈
「きっと、それは若さへの妬みなのさ、失われた古い古い青春か」楓
それぞれ、様々なことを言いながら、離れへの渡り廊下を歩いていく。
「さあ、取りあえず、家族ごとにね」
奈津美は、家族ごとに部屋を用意してあった。
圭子と楓、美智子と春奈、美紀と華奈、光それぞれを部屋に案内する。
ナタリーとルシェール、ニケとソフィーの部屋もあるようだ。
また、一行が全員集えるように、特別の大広間が真ん中に用意されている。
「わあ・・・広いなあ・・・」圭子
「部屋にも温泉と富士山と駿河湾が見える露天風呂・・・豪華だあ・・・」楓
「ここのドアを開けると、全員が集える大広間か、さすが史さんだ」美智子
「部屋の中にもキッチンがある、冷蔵庫も大きい」春奈
「バスタオルとか、石鹸、アメニティも、すっごい高級品」美紀
「うん、きっと華奈の可愛らしい浴衣姿は光さんを魅了する」華奈
とにかく、おおはしゃぎの状態である。




