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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第28話明日の柔道の授業を前にして

さて、柔道部員にも知られていたように、光がボクシング部のキャプテンを「やっつけた」話は、瞬く間に他の運動部系の生徒に広まっていた。

そして、顧問をはじめ、ボクシング部の過去の秘されてきた行状も明らかにされたのである。


ただ、その「秘されてきた行状」の例は、ボクシング部に限ったことではなかった。

同じような、「弱いものいじめ」の行状は柔道部においても然りなのである。

様々な、ボクシング部と同様の「よからぬ噂」は、知られているものの、「表沙汰」にはなぜか至っていない。


その柔道部の顧問は、オリンピックにも出場した有名選手である。

ただ、その顧問が選手としてオリンピック出場した時は、期待の多さに負けたのか、一回戦負けを喫し、散々「本番に弱い」とマスコミに叩かれた。

それ故か、新聞社等、マスコミ関係者を異常に嫌っている。

また、あだ名が「国粋主義者」と言われるほどに外国嫌いである。

これもオリンピック出場時の「大失態」が、トラウマとなり、「外国嫌い」に結びついたのかもしれない。


そんな顧問は、食事は常に日本食を貫く。

中華料理、韓国料理等のアジア系料理は元より、イタリアンやフレンチ等は食事として認めない。

「外国食は、日本精神を汚す」とまで言い切る。

学園のお昼でサンドイッチを売っていることも、柔道部顧問だけは、いつも強硬に反対している。


また。柔道部員たちに対する練習も、かなり昔風である。

まず、一番好きなのは「うさぎ跳び」「腕立て伏せ」

いつも、精神論を第一にする。


他の部活動、特に文化部系の部活動については、蔑視である。

例えば男子学生が音楽系の部活に入っていると、授業中でも廊下でも叱り飛ばすこともある。

「日本男子が、女子供のするような、西洋音楽など恥さらしだ!」

周囲が驚くような大音量で怒鳴るのである。


それに対して校長先生をはじめ、他の部活の先生、学生が何も言えないのは理由がある。

この学園の柔道部が毎年、高校総体で優秀な成績を取り続けていること、OBにも有名選手が多いこと、とにかく学園の誇りの一部なのである。


そして、その「何も言えない」人々の多さを利用して、様々な噂がある。


「顧問が気に入らない学生は、顧問に夜道で関節を外される」

「教科としての柔道の練習中に、柔道部員に失神するほど投げられる」

「それで病院に行っても、何の謝罪もない」

「通報しようとした病院の先生も襲われたとか」

とにかく、わがまま放題の行状がまかり通っているのである。


しかし、光はそんな噂や、柔道部には全く興味がない。

教科としての柔道の授業も、いつも簡単に投げられ、ゼイゼイしているだけである。

そもそも、受け身の練習にしても、うさぎ跳び、腕立て伏せの練習にしても、超テキトーで、「やっているフリ」他の男子学生の中に入り、目立たないようにこなしているだけ。

とにかく「体力はない、だから無駄に使いたくない、というよりは早く家に帰って寝たい」

光には、そんな考えしかないし、それについては、他の男子学生もあるいは女子学生も、周知にしてわかりきっていることである。


また、柔道部員も、「授業中の乱取り程度」で、そんな光を投げるものはいない。

つまり、柔道部員が投げるほどの強さが無い、誰でも光など簡単に投げることが出来るので、柔道部員の「練習の対象」にならないのである。



「ああ、明日柔道の授業か・・・簡単に投げられて、後は壁のところで座っていればいいや」

「ほんと、この暑いのに柔道着なんて、まっぴら御免だ」

「それにさ、柔道着って洗濯も面倒だ」

「干すのも時間がかかるしさ」

「超面倒―・・・あーーやだやだ・・・アホらしい」

「明日あたり柔道場に落雷でもないかなあ」

光はブツブツと言いながら、それでも柔道着をバッグに詰め込むのであった。

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