警察官の非行暴露と逮捕
「おい、そこまでだ、やめておけ」
年輩の警察官が井出警察官を抑えた。
年輩の警察官は顔が真っ青、井出警察官は怪訝な顔をして年輩の警察官を見ている。
「この高校生の右隣に座っておられるお方は、警視庁本庁の刑事だ」
「警視庁の中でも、エリート中のエリート刑事、私の本庁時代の先輩だ」
「時の首相とも懇意だ」
警察署長は、そう言って、井出警察官の顔を見た。
井出警察官は、その言葉を聞いて震え出している。
「それから、右隣に座っておられるお方は、公安庁所属の特別調査官だ」
「とても、井出君ごときが暴言を吐ける相手ではない」
署長がつけ加えると、井出警察官の顔が、真っ青になった。
少なくとも、ソフィーに対して完全に暴言を吐いている。
「最後に真ん中に座っておられる高校生は・・・」
署長は光に深く頭を下げた。
「首相直属の、調査官だ、全ての行政について調査可能だ」
「高校生だからと言って・・・」
署長の言葉で、井出警察官はヘナヘナと座り込んでしまった。
何しろ、光については「小馬鹿にしたような」目で、睨みつけていたのである。
「まあ、事実としてはね・・・」
ソフィーがタブレットを鞄から取り出した。
あちこちタブレットの画面をタップすると、署長室のテレビ画面に動画が映り始めた。
「今日の事件の動画ですよ、私もこの井出警察官の悪い噂を聞いて、尾行していたの」
ソフィーが説明をすると、確かに今日のスーパー前の動画が映っている。
スーパー前の直線道路を安全運転で走っている軽トラック、かなり車間距離が開いている段階で、井出警察官の警察車両が猛スピードで軽トラックを煽る状況、そして井出警察官の暴言とサイレンが全て再生された。
その後、驚いた軽トラックがハンドルを切り損ねて塀に激突、「清水がはね飛ばされる」場面もある。
動画の中で、井出警察官がニヤニヤしながら事故車両に近づく姿と、おそらく軽トラックの中で死亡しているおばあさんへの、「つば吐き」、抗議をしている清水の両親への暴言や、公務執行妨害での逮捕の瞬間も映し出されてしまった。
それを見ていた警察署長、年輩の刑事の顔が苦渋にゆがむ。
その二人の表情を見て、ソフィーは別の動画を見せた。
井出警察官とA新聞記者の、「犯罪者」の亡くなったおばあさんの家の前での「暴言」の場面に変わった。
それを見た、警察署長、年輩の警察官は表情を変え、いきなり立ち上がった。
電話で署長が指示をする。
「清水さん夫妻の釈放と、井出警察官を留置場へ」
署長がきっぱりと言い切ると、年輩の警察官は井出警察官に手錠をかけてしまった。
井出警察官は、本当に驚いた顔をしている。
「そんなことすると、父の新聞社が・・・」
井出警察官が言いかけると、その言葉をソフィーがさえぎった。
「無駄だよ、そんなの、今見た動画は、官邸と公安と警察庁本庁にも、送付済み、それからマスコミ各社、テレビ局全てに送った、もちろん、あなたとお父さんの関係もしっかり記入済みでね」
「それから、こんな警察官を見逃してきた署長や、先輩も罪が重いよ、私も出来る限り病院関係者や「被害者」「加害者」宅で調査したけれど、同じような手口が、ゴチャマンとある。調査報告書として、本日報告済みだよ」
ソフィーの言葉は厳しい。
署長や、この警察署全般が責任を取られそうである。
うなだれる警察署長や年輩の警察官、腰が抜けて立ち上がれない井出警察官を後目に、光たち一行は、警察署を出た。
清水の両親も釈放され、刑事の運転するワンボックス車に全員が乗り込み、病院に向かう。
「とにかく清水君は命に別状はありません」
ソフィーが両親に伝えると、両親は泣き出してしまった。
「とにかく、本当に迷惑をおかけしました」
「必ず、厳しい処置を行います」
刑事の言葉も神妙である。
ただ、両親とも泣き伏しているので、病院に送り届け、光たちは、少し清水の顔を見た後、光の家に帰った。
ソフィーは、光の家に入ると、まずピアノの上に置いてある、光の母、菜穂子の写真に手を合わせた。
目を閉じて、しばらく何かつぶやいた後、ソファに座った。
「うん、光君の淹れた珈琲って、美味しいって評判だけど、本当だね」
ソフィーは珈琲を一口すすり、満足そうな顔になる。
「それほど、評判なんですか?」
華奈は、尋ねながら、うれしそうな顔になる。
華奈は、光がほめられると、自動的にうれしくなる。
「うん、しっかりとした味・・・今日はコロンビア?」
校長も珈琲には詳しいようだ。
「はい、ありがとうございます、コロンビアです。甘味と苦みがほどよくて、しかもコクがある」
光は校長の舌の鋭さに、驚いている。




