清水の頼み 突然光が反応した若い女性
「光君・・・」
清水の声は、はっきりしている。
しかし、打ち身がひどいらしく、身体は動かせないようだ。
「はい、清水さん、大変でしたね」
光が心配そうに声をかける。
「本当に・・・頼みたいことがある」
清水は、再び、はっきりと声を出した。
清水の目は真剣である。
「はい・・・何でしょうか」
光も真剣な顔になる。
その清水と光のやり取りに、全員が注目する。
「軽トラックの運転手に、非は全くないよ」
清水は、意外なことを言った。
「え?・・・」
光が驚いていると、清水は言葉を続けた。
「普通に走っていたんだけど、突然サイレンを鳴らされて、焦ったんだと思う」
「普通に走っていて?突然サイレン?」
光は首を傾げた。
「うん、あのおばあさんは子供のころから知っているんだよ、制限速度を守る人なんだけど・・・それに警察車両が、かなり車間距離開いていたんだけど、猛接近して煽りながら、突然、大サイレン鳴らしたのさ、それから警察車両に、そこをどけって騒がれて」
清水の意識がはっきりしだした。
「それでですか・・・」
光の顔に怒りが浮かんだ。
「それじゃあ、そのおばあさん、可哀そうすぎる」
由香利も怒った。
「丹精こめて、苦労して野菜作って、美味しいもの食べてもらおうとして出荷して・・・」
「制限速度で走って、警察車両に煽られて・・・」
春奈も、顔が真っ赤になった。
久しぶりの怒り顔である。
「清水さん、頼みって・・・」
光は清水の顔を見た。
「うん、おばあさんの家族に、清水が復活したって、恨んでいないって伝えてほしい」清水
「わかりました」
光は、清水の顔をしっかりと見た。
「それから・・・」
清水は、少し咳き込んだ。
「うん、わかります、必ず」
光の目が異様に光った。
「後は、まかせてください」
「必ず、清水さんと、何よりおばあさんの敵を討ちます」
光と一行は、清水に頭を下げ、医師二人を残して集中治療室を出た。
祥子先生は、集中治療室の前で清水の両親を待つことにした。
「ふう・・・」
光、春奈、華奈、由紀、由香利と校長は別室に再び入った。
しかし、巫女たちは、全員が表情に疲れが見える。
「ああ、寸前の人間を呼び戻すのは、疲れるね」由香利
「由香利さんに、その力があるとは知らなかった」春奈
「うん、参考になりました」由紀
そこまではいいのだけれど
「さすが、年増だなあ」
相変わらず、華奈の表現は工夫がない。
結局、年上巫女たちから呆れられ、にらまれている。
「ところで、清水君の言っていたことだけど・・・」校長
「敵討ちといっても、証拠がないとさ」
春奈が光の顔を見た。
そして、全員の目が光の顔に集中している。
「ああ、これは私の役目」
突然、若い女性の声がして、別室の扉が開けられ、きちんとした紺のスーツを着た若い女性が入って来た。
年齢は二十二、三歳、小柄ではあるが、スタイルがピシっと決まっている。
すると、光の目が輝き、弾かれたように立ち上がった。
全員が珍しく敏捷な光と、その突然現れた若い女性を見ている。
「あれ?もしかして?」
光は、その若い女性の顔をじっと見ている。
「ほお・・・わかる?少しは成長したみたいだね、光君」
若い女性は、目鼻立ちがくっきりした、かなりの美人。
その「美人」と知りあいらしい光を、春奈、華奈、由紀、由香利が、驚いた表情・・・というよりは、不審な表情で見ている。




