光の厳しい顔
春奈は、本当に腹が立った。
とても、このままにはしておけないと思った。
そうしないと、清水の事故の話が、一歩も進まない。
無理やり、華奈の手から光のスマホを奪い取った。
しかし、春奈の反応も華奈と大差がない。
「圭子さんからのは開けてある」
「楓ちゃんなんて、六通来ているけど、全て未開封」
「華奈ちゃん・・・八通未開封・・・フフン、そんなものさ」
「他の人は・・・たいてい四通ぐらいか・・・春奈さんは、一つだけ、勝った!」
「あ、ルシェールは二通開けていない・・・強敵・・・」
「でも、由香利さんの、全部開いている・・・でも、おやすみとかおはようばかりだ、みんな・・・たいしたことないや」
結局、清水の事故の話は、何も進んでいない。
いつの間にか、光は家の固定電話で誰かと話をしているようだ。
「あの・・・メールの内容を直接、祥子先生に聞きました」
「取りあえず、清水さん、品川の病院に担ぎ込まれているので、お見舞いに行きます」
「・・・ただ・・・」
電話を終えた光は、何故か浮かない顔である。
「ああ、ごめん、スマホ返すよ」
春奈は、少々反省しながら、光にスマホを返した。
華奈と大差が無かった反応が、恥ずかしかった。
何しろ、光の顔が真顔になっている。
それには、華奈も恥じたのか、下を向いている。
「ところで、ただって?」
春奈は、光の真顔、浮かない顔が気になった。
華奈も、真顔になっている。
「意識不明らしくてね・・・ちょっと心配」光
「交通事故への巻き込まれだよね」春奈
「うん、とにかく行こう!」華奈
平穏な朝は、一変した。
とにかく病院まで、光の表情が厳しい。
春奈と華奈にしても、光のここまでの厳しい顔は珍しい。
「ねえ・・・華奈ちゃん」春奈
「うん・・・何か、変」華奈
「きっと、これって何かある」春奈
「ここまで、光さん、厳しい顔ってないもの」華奈
「巻き込まれって、何があったのかなあ」春奈
「うん、意識不明だから・・・」華奈
「探ってみるかな」春奈
「うん、協力します」華奈
小声で話をしていると、光が低い声で、二人にささやいた。
「もう、由紀さんと由香利さん、校長も病院に着いたそうです」
「かなり危ない状態らしい、それを三人で止めている」
「絶対、救いたいし、このまま死なすわけにはいかない」
「こんなことをしでかした原因を、奴を・・・」
光の目が、恐ろしく光っている。
病院に着いても、光の厳しい顔は変わらない。
春奈も華奈も、普段の軽口など、まったく話せない。
「とにかく絶対安静、集中治療室にいる」
病院の入口で、由紀が光を出迎えた。
既に涙顔になり、身体も震えている。
「いや、何とかしないと・・・」
光はは、由紀の手をしっかり握った。
春奈と華奈の表情が少し変わるけれど、、とても口を挟める状況ではない。
そのまま、集中治療室に向かった。
「ああ、ありがとう、来てくれて」
祥子先生の顔が見えた。
集中治療室の前に、祥子先生と由香利が立っている。
「はい、意識不明、絶対安静とか・・・」光
「うん、巻き込まれた相手が軽トラックだったから、命はまだ、かろうじて持っているけど」
由香利の声も重い。
「あれ?校長先生は?」
光は、校長の姿を探した。
「ああ、病院の関係者と別室で、話しているみたい」
祥子が別室の方角を指さした。
「わかりました、ちょっと行って来ます」
光は、祥子先生に頭を一旦下げた。
そして、春奈、華奈、由香利、由紀を手招きする。
「じゃあ、何とか頼むよ」
恐ろしいまでに低い声だった。
光の目が光っている。
春奈、華奈、由香利、由紀が頷くと、光は別室の方へ向かって歩いていく。




