犬の飴に嫉妬する華奈 お正月温泉計画
「でもさ、この犬ずっと口の中なめているんだけど」楓
「舌をずっと回しているよね」春奈
「うん、ちょっと不自然、いつもこんなことしないよ」由紀
「そうかあ、由紀ちゃん何度も来ているの?」春奈
「うん、寒川近いしさ、光君とバッタリってことがあった」由紀
ルシェールは気に入らなそうな顔をする。
「でもさ・・・光君・・・」
由紀は何かに気づいたようだ。
「その包み紙って・・・もしかして?」
由紀は光の手にある包み紙を見ている。
「え?・・・わかった?」
久しぶりに光のウロタエ顔になった。
「もーーー、だめだよ、犬にそんなことしちゃ!」
由紀が呆れている。
「え?何したの?」楓
「正直に言いなさい!」春奈
「いけないことなの?」ルシェール
結局、「尋問」される光である。
「あ、わかった!面白いけれど、それはまずいよ」
すると、由香利が笑い出した。
全員が由香利の次の言葉に注目する。
「あのね、光君ね、中華街で中華の飴を買って、この犬のオリヴァーに食べさせたの」
「その飴がオリヴァーの歯茎に、くっついちゃって、オリヴァーはそれを取ろうとして、苦労している最中」
由香利の解説に、光は恥ずかしそうに頷いている。
「どうして、そういう変なイタズラをするの!」春奈
「確かに面白いけど」楓
「でも、まだオリヴァー食べたいみたいだよ、光君に寄って来ている」圭子
「犬だって甘いものは好きなのかな」美紀
「光君がそういうイタズラするって、知らなかった、面白いなあ」美智子
「そんな犬にあげる前に、私がもらうべきだ」華奈
「あのね、犬と張り合ってどうするの?呆れる・・・後で本当に外人墓地に置き去りにするよ」
美紀は、呆れを通り越して、怒りさえ感じている。
その後は、裏にあるクリスマスグッズの店や、港が見える丘公園などを散策して、そこでお別れとなった。
「じゃあ、本当に後で連絡するから」圭子
「はい、楽しみにしています」光
「とにかく、光君が寂しいお正月を迎えることだけはないよ」美智子
「・・・ありがとうございます」
光は、少し涙目である。
ただ、帰りの車内では疲れたのか、ずっと眠っていた。
ほぼ全員が帰り、ようやく日常の光の家の静穏さが戻った。
黒ベンツのワンボックス車で送ってもらったピエール神父には、リビングに入ってもらい、お茶を出した。
少し世間話をした後、ピエール神父も帰って行った。
「うん、静かになったね」春奈
春奈と光は向い合せで紅茶を飲んでいる。
「うん、にぎやかだったから」
光も、少しホッとした様子。
「少し疲れた?」
春奈は、光の表情をうかがっている。
「うん、ずっと動き詰めだったからかなあ、少し休みたいかな」
光は本音を、そのまま言う。
「そうだね・・・」
春奈自身も、少し疲れを感じていた。
特に身体も神経も張りつめた生活が続いたことは事実。
そうなれば、ここで少し休む、クールダウンをすることは大切だと考えている。
「でも、鎌倉とか横浜、御茶ノ水も詳しいね」
春奈は感心している。
都内の大学に通ったとはいえ、それほど外出をしなかったのである。
「うーん・・・好きな街なので・・・」
光は、少し恥ずかしそうな顔をする。
春奈は、この恥ずかしそうな顔も好きである。
「他にも好きな街ってある?」
春奈は、光に聞いてみた。
少し疲れを癒した後、また出掛けたいと思っている。
「そうだねえ・・・今日みたいなのは疲れる、人が多すぎて」光
「うん、光君、引率みたいだった、ああいうの疲れるね」
春奈は、少し光に同情も感じていた。
「また、春奈さんと横浜でもいいかなあ、伊豆まで行って温泉でもいいな」
光は、久しぶりに優しい顔になっている。
「え?・・・この顔久しぶり・・・」
その顔を見た途端、春奈はドギマギしてしまった。
そのうえ、「春奈さんと」「横浜、伊豆の温泉」である。
「・・・まあ、どうしましょう・・・」
春奈の顔が真っ赤になってしまった。




