豪勢な中華料理を食べながら
「さあさあ・・・おなかも空いたころです、まずは食べながらです」
首相の合図で、中華料理が運ばれて来る。
フカヒレ煮込み、北京ダック、アワビ醤油煮込み、牡蠣五目煮込み、エビチリ、青菜炒め、海老餃子、キノコとホタテ貝炒め、フカヒレスープ、翡翠チャーハン、小籠包他様々な中華の名品が大きなテーブルに置かれ、取り分け係により丁寧に分けられている。
「このフカヒレ・・・味が濃いし、美味なんてもんじゃない・・・」春奈
「北京ダックって・・・こんな高級料理初めて・・・」華奈
「アワビって、どう料理しても美味しんだけど、これは格別」ニケ
「牡蠣の煮込みは・・・本当に滋養強壮だね」圭子
「翡翠チャーハンって、緑色している餡だけど、ヘルシーな感じ」楓
様々、最初は食べながら感想を言っていた巫女集団であったけれど、次第に何も言わなくなった。
とにかく出てくる料理が美味すぎて、食べるのに夢中。
普段は食が細い光も、それでも「人並み」に食べている。
「楓・・・あまり食べ過ぎると・・・」
圭子は楓に牽制をしながら、アワビを頬張っている。
「大丈夫、これぐらいじゃ、まだ若いもの」
楓は何も気にしない。
エビチリがとてもお気に入りらしい。
「あ・・・入れすぎた」
華奈は口をおさえている。
「ほら、小籠包のちゃんとしたのは、口の中に熱いスープが弾けるの、まったくお子ちゃまだから・・・」
美紀は、呆れ顔になるが、ここでも華奈は気にしない。
頬を膨らませたまま、ゆっくりと食べるようだ。
ただ、この状態では会話は無理。
「うん、華奈ちゃんの、あの美味に対する貪欲さはなかなかさ、光君しっかり見習うんだよ」
どういうトバッチリかわからないが、ニケは光の面倒を見る。
「青菜とか美味しいね」由紀
「光君しっかり食べているし、お弁当の参考になる」由香利
「う・・・さすが・・・でも危険・・・」
由紀の由香利への反応も早い。
首相も、思わず苦笑いをしている。
「ところで、食事中で申し訳ありませんが」
首相が語り出した。
にこやかな表情が変わり、真顔になっている。
「光君と、ここにおられる巫女様たちには、本当にお世話になりました」
「夏のコンサートの日には、あの暴力集団を退治していただき、本当に治安がよくなりました、政府の長として恥ずかしい限りですが、手を焼いていたのです」
首相は深く頭を下げた。
「それから昨日のクリスマスコンサートでも被害を最小限に抑えていただき」
「大災害を防ぐことが出来ました」
「どうにも対応が難しい相手でしたので・・・」
「本当にいろいろな、テロ対策を講じてありますが、なかなか難しくて」
「近隣国も不穏な動きが続きまして」
首相は光の顔を見た。
光の目が少しずつ輝き始めている。
「うーん・・・それを言われましても・・・」
光は、少し首を傾げた。
「私は高校二年生ですし、まだまだ社会的な勉強は足りないのですが・・・」
少し引き気味の態度ながら、何か考えていることはあるらしい。
「・・・一般的に・・・」
少し光の語調が変わって来た。
これには、光以外の全員が身構えた。
「まず、基本的に、国を守るということは、国民と国土を守ることだと思う」
「憲法を守ることが、国を守ることではない」
「攻め込む相手は、その国の憲法など考えないのだから」
「ただ、自分たちの国の利益を考えて、他国を攻めるのさ、古くからの事実」
「そこを取り違えてはいかんな、」
全く普段の光の口調とは異なっている。
「まあまあ・・・難しい話はともかくとして、もう少しお食事を楽しみたいな・・・」
突然、由香利が首相と光の顔を見た。
首相は、由香利に少し頭を下げている。
すると光の目の光が消えた。
それで全員が安心し、再び中華料理を食べ出している。
「そろそろデザートかな」
口いっぱいに、チャーハンを頬張りながら華奈キョロキョロとしている。
「・・・もう・・・こんな席で・・・全く・・・」
美紀は華奈のあまりの脳天気さに顔を真っ赤にする。
「確かに中華のデザートも食べたくなったけれどね」春奈
「でも、杏仁豆腐かなあ・・・」華奈
「タピオカのスープかな、あれも好き」由紀
「燕の巣も捨てがたい」由香利
「ゴマ饅頭とかもいいなあ」ニケ
「それを言い出したらデザートは限りなくあるよ」美智子
巫女連中が、ゴチャゴチャと言い出していると、結局話題にあがったデザートは全てテーブルの上に置かれている。




