奇跡?そして
「さあ!」
小沢の指揮でアンコールが始まった。
ロックバージョンの「ウィンターワンダーランド」。
軽快で、明るさに満ちたクリスマスソングが始まった。
「わっ、ルシェールと光君がデュエットなんだ」春奈
「あれ、ルシェールも上手いけれど、光君上手いよ」楓
「うん、高音がすごく伸びる、ロックバージョンもいいなあ、乗ってきちゃった」
美智子は身体でリズムを取り出した。
「うん、ちょっと華奈が怒っているけど、しょうがない、実力差だ」
美紀も冷酷なことを言いながら、身体でリズムを取り出している。
「あ・・・でも・・・まさか・・・」
突然、圭子が叫んだ。
「うん、見える」
美智子は立ち上がった。
「あ、あの人!」
春奈も立ち上がった。
「菜穂子叔母さん!降りて来たんだ!」
楓も立ち上がり、泣き出している。
「うん、菜穂子さん光君の隣に立っている、うれしそう!」
美紀も立ち上がった。
既に涙で顔が真赤である。
「菜穂子さんも歌っている!」春奈
「懐かしいよ!菜穂子さん!」美智子
「あ、菜穂子叔母さん、光君の頭をなでた」楓
「光君、気づいたみたい、笑っている」美紀
「光君の、あんな思いっきり笑った顔、初めて!」春奈
次の瞬間に、巫女たちの顔が再び、変わった。
「え・・・」圭子
「まさか・・・本当に?」美智子
「うん、はっきり見える」美紀
「あの白いきれいな女性?」春奈
「浮かんでいる・・・」楓
「うん、彼女こそ、聖母マリア様」圭子
「ニコニコして、光君、ルシェール、菜穂子さんを見ている」美智子
「うん、マリア様、私たちにも手を振ったよ」美紀
「ほんと・・・まさかだよね・・・うれしいなあ・・・」春奈
「みんな、立ち上がっている」楓
楓の言う通り、聴衆が総立ちになっている。
「きっとこれが、マリア様のお礼さ」
圭子がつぶやいた。
「さすが、マリア様の巫女ルシェールだ」美紀
「うん、まさかルシェールがここまで力をつけているとは、知らなかった」圭子
「光君への愛ゆえかな、さすがに深いなあ」美智子
「菜穂子さんも本当にうれしそうな顔している」美紀
「本当に、うれしいなあ」美智子
「まさか、ここで見えるなんて」美紀
「きっと、ずっと見ていたのさ、光君のこと心配で」圭子
「ほら、この二人、泣いちゃって声も出ない」
美紀は、立ったまま泣き止まない春奈と楓を、ようやく手を引いて座らせた。
「最後にもう一曲、今度は二人だけで」
小沢は、聴衆に会釈をしてステージを降りてきてしまった。
ステージの中央に、グランドピアノが運び込まれた。
光はピアノの前に座った。
ルシェールを呼び寄せ、何か耳打ちをすると、すぐに前奏を弾きはじめた。
「そうか・・・わかりやすい・・・」春奈
「ホワイトクリスマスか・・・落ち着く」楓
「ほんと、ルシェール歌上手いなあ」圭子
「光君が声を合わせると、雰囲気がグッとよくなる」美智子
「でも。華奈、涙顔・・・」美紀
「由紀さんも下を向いている」春奈
「・・・でも、しょうがないよね」圭子
「断然とした実力差があるしさ」美紀
「でもさ、華奈ちゃんって、まだわからないよ、これからだもの」美智子
「そうかなあ・・・子供だよ」美紀
「きっと今日のことも、今日限りって思っている」圭子
「ああ、その場限りかもしれない」美智子
「由紀さんも、打たれ強い、最後に勝つタイプ」春奈
「春奈ちゃんは?」美紀
「案外、大逆転あるかな・・・」春奈
「なし、前世でいい思いし過ぎ」圭子
結局、春奈以外は全員が納得している。
巫女たちはそれぞれ、別の思惑があったが、とにかくクリスマスコンサートは、大成功となった。




