第240話光の回復?もしや・・・
「わ・・・食べている」
由紀は驚いた。
「うん、実はね、光君ね、子供の頃、私にこうやってもらって、フルーツクリームサンドよく食べたの、本当に可愛かった」
美紀はうれしそうな顔になる。
「・・・私は、やってもらったことない・・・」
光を横取りされた華奈がむくれている。
「当たり前じゃない、あなたよだれはこぼすし、クリームはこぼすし・・・」
美紀はしっかりと暴露してしまう。
「・・・よくわかるような気がする」
春奈は素直に納得する。
「自業自得ですね」
ルシェールも同じく納得。
「とても、華奈ちゃんには光君、任せられない、速攻でつくって正解だ」
由紀はフフンと胸を張る。
「・・・でも、春奈も何もしてないな」
美智子は春奈を少し責める。
「そんなことはない、しっかりと見守って・・・」
春奈が抵抗していると
「まあまあ、でも二個目だよ、目も開いて来た・・・でも、あれ?」
圭子は光の食欲と変化を把握し、何かに気づいた。
「いい香りするね」
美智子は香りに気づいている。
「うん、ほんのちょっぴり教会のコニャックをレーズンに・・・」ルシェール
「・・・それって、もしかしてピエールの秘蔵の?ピエール後で泣くよ・・・」
美紀は笑っている。
「うん、構うことないって、母ナタリーにも了解とった」
ルシェールはニコニコしている。
「そうかあ・・・じゃあ・・・」
圭子の合図もいらなかった。
あっという間に、大皿の上は、何もなくなってしまった。
華奈も、むくれ顔は休止して、あっという間に三個平らげてしまった。
「ところで、起きられる?」
春奈が、光の前に座った。
「・・・う・・・」
相変わらず、「亀」速度で食べる光であるが、それでも春奈には反応する。
「起きます、春奈さん、ありがとう」
美紀が腕を離すと、光はようやく身体を起こした。
「はい、これ」
春奈は、水筒を差し出した。
光も心得ているのか、ゴクゴクと飲み干してしまう。
少しずつ、光の目や身体の動きに、力が入るようになってきた。
「ありがとう、春奈さん、いつも、本当に美味しい」
光は、心からお礼を言っているようだ。
目に涙までためている。
「うん、飲んじゃったら、今度はこれ」
春奈は、違う水筒を差し出した。
前の水筒とは、中身、温度が違うようである。
光は、ふうふうしながら飲んでいる。
ただ、本当に美味しいのか、飲み干してしまう。
そして、やっと光の優しい笑顔が戻って来た。
「本当にありがとうございます」
「生き返りました」
光は春奈に頭を下げる。
「ああ、みんな協力してくれたの、だから、みんなにもね」
春奈に促されて、光は全員に頭を下げた。
ゆっくりと立ち上がった。
歩くことも出来るようだ。
「うん、よかった」圭子
「がんばった、惚れ直した」美紀
「すごい闘いを制したんだ」美智子
母親たちが、ホッとする顔を見せる中で、楓が春奈に尋ねた。
「ねえ、一本目と二本目違うの?」楓
「うん、一本目はシソのジュース、奈良町資料館の女の子に作り方教わって、毎日飲ませたの」春奈は、にっりと笑う。
「う・・・目と鼻の先・・・灯台下暗しだった」楓
「二本目は?」ルシェール
「あれは、特製カフェオレ、珈琲豆とミルクは、かなりいいものを使った」春奈
「へえ・・・すごいね、今度飲ませて」由紀
「うん、私も」華奈
ようやく動き始めた光は、柔軟体操をしている。
光が突然、振り返った。
由紀と華奈を手招きしている。
「何かな・・・愛の告白かな」
華奈は、つい本音を言うけれど・・・
「・・・何もしていないくせに」
由紀もあまりの言葉にあきれている。
「もう、みんな練習しているみたい、行こう」
光の言葉は、華奈の予想とは、全く異なる言葉だった。
大笑いされる中、三人は大聖堂へと練習に向かう。
歩きながら光は華奈に声をかけた。
「華奈ちゃん、あの時支えてくれて助かった、何とか大聖堂まで入ることが出来た」
そこで、少し間があった。
「本当にうれしかった・・・今まで・・・ありがとう」
華奈は、その言葉で真っ赤になってしまった。
そして、廊下を歩きながら、全身を震わせ、そのまま泣き出してしまった。
光は、由紀にも声をかけた。
「由紀さん、寒川神社のお守りが、すごく力をくれた」
「何度か倒れそうになると、必ず熱い力をもらえた」
「本当に、強い神様、味方だね」
「由紀さんも、いつまでも元気で」
由紀は、身体の力が抜けてしまった。
少し、ガクガクしながら大聖堂までの廊下を歩いていく。
光と華奈、由紀の後ろ姿を見ていた美智子が突然、光にかけよった。
小声で光に何かをささやき、光の腕を取った。




