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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第239話ルシェールの強さ 何故かフルーツクリームサンド

ルシェールは、あっけに取られている日本の巫女集団を見ることも無く、華奈から光を奪い抱き上げてしまう。


「あ・・・やば・・・」由紀

「光君って、どうして、あんなに軽い?」楓

「あれじゃ、中身空っぽの人形・・・そのまま歩いているし」春奈

「あーーーー・・・・」

華奈は悲鳴をあげた。


なんと、ルシェールは、光を抱き上げたまま歩き、光の口から息を吹き込んでいるのである。


「う・・・ルシェール?」

ルシェールから長い間、息を吹き込まれていた光の口から言葉が聞こえた。

「うん、妻だよ、大変だったね、ありがとう」ルシェール

「ああ、そうだったっけ、ありがとう」

光もぼんやりながら、なんとなく応えている。


空しく、二人を見つめる日本人巫女集団の中でやっと華奈がつぶやいた。

「ふん、あんなの単なる人工呼吸さ、どうせ光さん、ぼんやりとして覚えてないから、誰がやっても同じ」

しかし、華奈のつぶやきは、悔し紛れ、大聖堂の前に空しく響いていた。



ルシェールにより大聖堂の中に運び込まれた光は、未だ仮眠室のベッドに寝たままである。

巫女たち全員が見守っている。


「よくがんばったもの、あんな相手に」

圭子は光の身体にすがって泣き出している。

「必死だったんだね、とにかく絶対倒れないって」美智子

「うん、この子、子供の頃から突然すごく頑張ることあった」美紀

「かっこよかったけれど、復活できるのかな」春奈

「ルシェールのキス・・・じゃない、人工呼吸で一瞬起きたけど、それからずっとこんな」華奈

「とにかく、少し安静にして、みんなで様子を見ましょう」

美智子は光の腕を取り、脈を診た後、厳しい顔になった。

「ああ、華奈は本番があるんだから練習にいきなさい」

美紀が華奈に促すけれど、華奈は目に涙をため、動こうとはしない。


「私も合唱で出るんだけど・・・」

由紀も動けないようだ。

そしてルシェールを見た。

楓もルシェールと由紀のところに寄って来た。


「そうか・・・ここは薬師の巫女か・・・」

圭子も楓を見ている。


春奈も何か思い出したようだ。

由紀を見て笑っている。


「うん、普通はそんなんじゃよくないけれど、任せる」

美智子も同意した。


「じゃあ、作って来るね」楓

「みんなの分も作るから」ルシェール

「少し大人の技を使うから華奈ちゃん来なくていい」由紀

「うん、足手まといかな」楓

「そうだね、味見でひっくりかえられたら迷惑」ルシェール

「取り分け係でどう?」由紀

結局、華奈は取り残されることになった。

ただ、それは華奈にとって残念なことではない。

意地悪な、年上巫女たちがいなくなり、意識不明とはいえ、光のそばにいられるのである。


「ふん、いいさ、みんな私を可愛いからといって、意地悪するけど、光さんだけは私の純愛をわかってくれている」

「だから、こんなに、優しい寝顔なのさ」

華奈はどんな状態でも、利益誘導型の発想を変えない。


「まあ、あの発想からして、確かに足手まとい」美紀

「美紀さん、甘やかし過ぎでは」春奈

「育て方はいいけれど、育ち方が悪い」美紀

「あまり、そんなことを言わないの、華奈ちゃんは華奈ちゃんなりなんだから」

圭子もあきれるが、華奈はそんな大人の言葉を聞いてはいない。


「ところで、圭子さん」

美智子の顔が厳しい。

「うん、まだ何かあるね」

圭子も厳しい。

「何だろうね・・・悪念は感じなくなったけれど・・・」

美紀も何か考えている。

「地蔵様が、もう一つの仕事って言っていましたけれど」

春奈も懸命に考えている。

「ただね、それほど、厳しい顔じゃなかったからね」圭子

「悪念とは違う種類かなあ」

圭子は、低い声で何か呪文を唱えた。

その姿を全員で見ている。



ルシェール、楓、由紀が大きなお盆に何かを乗せて入って来た。

「え?これ?」華奈

「まさかね・・・」春奈

「光君の夏までの定番」由紀

大きなお盆には、たくさんの「フルーツクリームサンドイッチ」が乗せられている。


「おそらく匂いだけで反応するはず」圭子

「ほら、反応した」

美紀は光の鼻にフルーツクリームサンドを近づけた。

「お母さん、それは私の役目!」華奈

「もう、遅い、光君反応した」

美紀の言葉の通り、光は先ず鼻をクンクンさせ、身体を起こした。

少しよろけたので、美紀がサッと支えている。

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