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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第238話VS吸血鬼(2)阿修羅の勝利と瀕死の光

「う・・・あんなことを・・・」

「しかし・・・まさかあれを使うとは・・・」

「いや・・・しかし、もう一つの神が見えて・・・」

地蔵がうめいた。


「あんな炎の中で闘うなんて・・・」

「阿修羅は何を考えているんだ・・・既にあの子の命は・・・あきらめたのか・・・」

「・・・だが、別の神が阿修羅にかぶっている・・・」

金剛力士阿形の顔色も変わった。


「阿修羅の手が炎の刃になった!」美智子

「吸血鬼の爪が長い鋼のような刃!」春奈

「二人とも、もの凄い速さ・・・でも・・・」楓

「吸血鬼の刃は、阿修羅にまるで届かない!」由紀

「阿修羅は六本の刃、吸血鬼の刃は阿修羅のどれかの刃で必ず止められ・・・」華奈

「うん、吸血鬼の刃が今、折れた」春奈

「でも、阿修羅の炎の刃が吸血鬼を切り刻みはじめた」美紀

「吸血鬼、とうとう牙をむいた!」美智子

「あ、その牙が炎の刃で折られた」楓

ついに阿修羅の炎の刃が、吸血鬼の喉と胸を十字の形に切り裂いてしまった。


吸血鬼の身体から、どす黒い血が噴き出している。


「あ・・・吸血鬼・・・とうとう、膝をついた」春奈

「阿修羅が吸血鬼に、今度は手から蒼い光・・・」華奈

「あ・・・吸血鬼・・・消えた・・・って大きなコウモリに戻った」楓

「阿修羅何か呪文!」華奈

「コウモリ・・・大爆発・・・」由紀

「うん、これで・・・」美智子

「・・・終わったのかな・・・」楓


「でも、まだ炎の中に阿修羅・・・光さん立っているはず・・・焼けちゃう・・・」

華奈は、泣き顔になっている。


「いや・・・華奈さんの言う通り・・・ただ、少しは心が強くなった、成長したようです、まだかろうじて生きています」

地蔵の厳かな声が聞こえた。


「頼むよ、地蔵さん」

金剛力士阿形の声が聞こえた。

その言葉に応えて地蔵が錫杖の鈴を鳴らした。

すると、光を包んでいた炎は消え去った。


そして、大聖堂の前には何もない。

空に浮かんでいた黒い飛行船も見えない。

雲ひとつない、真っ青な青空になった。

今まで周囲に立ち込めていた、生臭い匂いも消えている。


「あっ!光さん!」

華奈がフラフラと立っている光を発見した。

走り寄って光を支える。


「大丈夫?」

春奈も駆け寄る。


「ん・・・う・・・」

ほぼ、立っているだけであるが、それでも反応がある。

顔は真っ赤になっている。


「今、この子は立っているだけ・・・ほとんど意識はありません」

地蔵が哀しそうな顔をする。


「おそらく倒れた瞬間を狙われる・・・祈祷書をな」

金剛力士阿形も厳しい顔になる。


「だから、今、華奈さんとこの子の身体の中の阿修羅が身体を守って必死に倒れないように支えています」

地蔵も次第に厳しい顔になった。


「いや・・・吸血鬼はコウモリになって消えたのでは?」春奈

「はい、形としては消えました」地蔵

「・・・といいますと?」美紀

「まだ、少々ですが、悪念が分散して、まだこのあたりを、うごめいています、この子が倒れる瞬間、再び集結してコウモリとなり、吸血鬼と化して、襲ってきます」

地蔵は周囲を見回している。


「・・・どうすれば・・・」

春奈も涙顔になった。


「大丈夫、簡単です、誰かが再び、息を吹き込めばいい」

「後は、おまかせ・・・もう一つ仕事が残っていますので、その時にお会いしましょう」

地蔵はここで、何故か不思議な笑みを浮かべた。

そして金剛力士に合図を行い、三体とも一瞬のうちに姿を消してしまった。

大聖堂の前には、華奈に身体を預けているだけの光と、その他の巫女集団が残された。


「息を吹き込むとは?」春奈

「そんなこともわからないの?いい大人になって」美智子

「え?もしかして?」

楓は華奈の顔を見た。


「うん、わかった、私の出番さ」

途端に華奈は、ニンマリと笑う。

「・・・うーん・・・みんなの目の前で?ってそんな遠慮している場合じゃないか」

由紀もニンマリと笑う。


「母親たちは、対象外だよね」

春奈も気が付いたようである。

「・・・くやしいなあ・・・時代間違えた」美紀

「うん、ちょっと気に入らない」美智子

「あなたたち、そんなこと言って牽制しあうから、一歩遅れる」圭子


教会の扉が開けられた。

途端に、ルシェールが猛ダッシュしてくる。

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