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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
229/419

第229話金剛力士のウォーミングアップ?

「うーん、大丈夫だよ、なんとなく身体持っているし、今までだったら、こんなに冬に動くと二週間は寝込むから、かなり体力がついたのさ」

光は、誰に対しても同じ趣旨の答えをする。

しかし、その答えを聞いた人々は全て同じ反応になる。


「これ程、危険もなく、寒い思いもさせず、大聖堂までバスで送り迎えして、登下校も送り迎えで、そんなんで風邪引かれたら迷惑、甘えるにもほどがある、私たちがいないととっくに倒れている」

全員、そう思うけれど、近来まれにみる不穏な状態なことは事実。

もし、光が弱って倒れでもしたら、後から起こる災難は計り知れない。

そしてその災難は、光だけではなく、巫女たちも含めて非常に多くの人が犠牲者になる。

その不安が、かぎりなく強い。

そのような不安にかられて、巫女たちの緊張も少しずつ高まっている。



そのような状態が続く中、奈良の圭子から春奈に電話がかかってきた。


「ああ、寒川さんのお土産ありがとう。私も大好きな神社でね」圭子

「へえ、知っていらっしゃるんですか」春奈

「ああ、そうさ、昔から東京に車で行く時は、必ず厚木で降りて、あそこに寄ったの、いい神さんでね、強いし大らかだし」圭子

「わあ・・・私もそう感じました」春奈

「お土産でもらった、小田原の蒲鉾とか塩辛、シラスも美味しかった」圭子

「うん、海の幸もいいですね」春奈

「うん、楓も海のものをあまり食べないけれど、食べていたもの」圭子

「へえ、そうなると楓ちゃん、ますます、ガッチリ体型に?」春奈

「ねえ、まったく腰周りだけは立派になってきた、ルシェールとか春奈ちゃんの体型が欲しい」圭子は嘆いている。

「圭子叔母さんは、スタイルはいいのにね」春奈

「ねえ、全く芋娘だよ、あんなの」

圭子はまたしても嘆いているが、春奈は何も言わなかった。

変に答えて、仕返しが心配だったのである。


「ところでねえ、春奈ちゃん、そろそろだね」

圭子は話題を変えた。

クリスマスコンサートのことを言っているようだ。


「はい、練習は順調です。私も時々聞きに行きますが、光君も頑張っているし、音楽もプロが入ったせいか、音に厚みが出ています、叔母さんも必ず聞きに来てください」

春奈も、感じたことをここでは素直に言う。


「うん、そうだね、楓もナタリーも美智子さんも連れて行くよ」

「まるで合宿みたいになるね、大きな家だからいいか」

圭子は、そのこと自体はうれしそうである。


「美智子さんは、ともかく・・・」

春奈にとって母美智子は鬼門である。

名前を聞いただけで、また何か怒られるような感じがある。

そのため、春奈も話題を変えた。


「ところで、奈良に変化は?」

春奈は、奈良の状況も心配だった。

地蔵菩薩が結界を張りなおしたとはいえ、状況を一応確認したかった。


「ああ、こっちも少しずつ始まっている」圭子

「始まっているとは?・・・何ですか?」

春奈は不安を感じたけれど、圭子からの答えは不思議なものだった。


「ああ、あの金剛力士さ、阿修羅がゴツイって嫌がる二人」

圭子は金剛力士のことを言い出した。

「うんうん、そこまで嫌がるの変だけどね・・・まあ、私たちは関与しないけれど」春奈は、フンフンと聞いている。


「あの二人、毎日像から抜け出して、準備運動かなあ、身体動かしている」圭子

「へえ・・・金剛力士の準備運動って、ところでどんな?」

春奈は、少し興味があった。

圭子は見通しの巫女、見えないものが見たいように見える巫女である。

その巫女の目に、金剛力士の動きが、どのように見えるのであろうか。


「えーっとね、普通の運動選手と同じ、見ていて陸上の選手みたいな感じ」圭子

「へえ・・・」春奈

「屈伸とかストレッチから始まってね、飛火野をダッシュしたり・・・」

「あ・・・今日はそれに加えて、お相撲さんが土俵でやる・・・脚あげて・・・何だっけ?」

圭子はうまく説明できない。


「ああ、四股ですか」春奈

「そうそう、それやっていたなあ」圭子

「へえ・・・見てみたい、面白そう・・・」春奈

「ああ、そういえば、その四股って邪鬼を踏み潰すのか」圭子

「うん、どこかの本で読んだことがあります」春奈

「もしかするとコンサート本番の日に見られるかも」圭子

「へえ・・・楽しみが増えるって・・・そんな状態じゃないか」

春奈は、ついはしゃいでしまい、少し反省した。

上手くいくも行かないも、ある意味光の体調次第である。

そして光は自分の体調管理もロクにできない、グウタラ、その意味で春奈が一緒に住んで面倒を見ているのである。

とても、はしゃいでいる場合ではない。

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