第216話ジョイントコンサート(1)
軽音楽部というよりは、音楽部と合唱部を含めたジョイントコンサートの当日となった。
学園内のホールは、既に満席。
聴衆は、この学園の学生と親たちが多いけれど、他の高校からも多数来ているようだ。
その中に混じって、小沢やヴァイオリニストの晃子他音楽のプロや音大生たちも聴きに来ている。
「へえ、ステージの学生さん、みんな制服じゃないね、オシャレしているんだ」
晃子はステージに見える演奏者の服装に注目している。
「ああ、それがここの校長のセンスのいいところさ、つまらないことにはこだわらないのさ」
小沢は、ウンウンと満足顔。
「あ、ステージの幕があがった」
晃子の目がステージにひきつけられる。
「うん、あの子たちもオシャレだなあ、ステージということをよく考えている」
小沢もハッキリと見えてきた演奏者たちの服装に注目している。
そのステージ上の軽音楽部や合唱部、光はキチンとしたスーツ、それも深い赤ワイン色のジャケットで統一している。
祥子も、同じ色のスーツで胸にブルーローズのアクセサリーをつけている。
そして演奏が始まった。
「うん、かっこいいボサノヴァ」
「軽いけど、味がある」
「光君のピアノがなまめかしい」
「合唱部のハモリもいいなあ」
様々、声が聞こえてくる。
ボサノヴァが終わり、次のジャズナンバーになった。
「うん、これが祥子先生の言っていた光君のA列車か・・・いいなあ・・・」小沢
「もう、みんなわかっているらしい、手拍子、ピアノソロだけで」晃子
「いやー盛り上がるなあ・・・手を自然に叩いちゃう」小沢
相当の盛り上がりの中、光のA列車ピアノソロが終わった。
促されて光が、やっと聴衆にお辞儀をする。
「あのお辞儀がたどたどしい」小沢
「何しろ亀です、指導のし甲斐がありますね」
いつのまにか、春奈が隣に座っている。
次の曲が始まった。
「うわっ・・・今度は渋い」
「オータム・イン・ニューヨークかあ」
「なんか、沁みてくる曲」
「ほっとしちゃった」
「光君、あんな渋いのも出来るんだ」
ここでも様々な声が聞こえてくる。
「うん、ジャズピアノとジャズヴァイオリンでもいいな」晃子
「あまり連れ出さないでください」春奈
「うーん、音楽のため」晃子
「どうでしょうかね・・・」春奈
「お言葉にトゲがありますが」晃子
「事実でしょ・・・全く」
春奈としては、晃子が光に近づくことはどうにも危険、その意味で華奈と大差がない。
第二部が始まった。
本当は休憩中に春奈も晃子も光と話をしたかったが、一歩遅れた。
動こうと思った瞬間、三年生の由香利が何か紙袋のようなものを持って、舞台袖口に向かったのである。
「あれは、光君への差し入れだ、きっと」春奈
「うん、夏のコンサートの時の彼女からの花束の中にもチョコレートが入っていたし」晃子
「晃子さん、案外、気が付く」
春奈は驚いている。
「ふん、恋敵の動向には注意を払わないと」晃子
「光君の好みもわからないくせに・・・」春奈
「私は奪い取るタイプ、関係ない」晃子
「そういえば、花束の中のチョコレートね」春奈
「それ、ところで、どうなったの?」晃子
「・・・四つあったから私が三つ、光君は一つ」
春奈はフフンと胸を張る。
「・・・それって、ひどくない?性格悪くない?」晃子
「だって、一つ食べたら、光君寝ちゃったもの」春奈
「・・・疲れていたのかな」晃子
「きっと原因は、真紅の胸あきドレスの女だ」春奈
「うん、あまりの色っぽさに、トロトロになったんだ」晃子
「どうして、そう利益誘導型の発想になるのかな」
春奈が呆れていると、第二部の幕があがった。
「わっ・・・ダイアナ・ロスだあ」春奈
「あれ?三人女性が並んでいる」晃子
「うん、祥子さんと由紀さん、あれ?由香利さんだ・・・」春奈
「え?由香利さんって音楽系のクラブ?」晃子
「いや、ダンス部だけど、歌は上手・・・あ、ダンス指導もしたのか」春奈
二人がゴチャゴチャ言っていると、曲が始まってしまった。
「うわ、祥子さん、上手いなあ、完璧だあ」晃子
「ノリノリだよね、由紀さんも弾けている」春奈
「由香利さんって、スタイルもいいし、歌もパンチがある」晃子
「うん、いつもね、光君って由香利さんの前になると、顔真っ赤になる」春奈
「うーん・・・若いし美人だし、強敵だなあ」
晃子は難しい顔になった。
その晃子に、春奈が追い打ちをかける。
「隣の由紀さんも強敵さ、他にもルシェールもいる」春奈
「・・・ところで、華奈ちゃんは?」
晃子は、それでも華奈を気にした。
が・・・しかし・・・
「うーん、無理じゃない?光君にあやされているだけ」
春奈は華奈が聞いたら目をむくような発言をサラリと言ってしまう。
「ヴァイオリンもまだまだ」
晃子も、そう言われるとホッとするのか、軽く本音を言っている。
「華奈ちゃんは動きが元気だけが取り柄、勘はいいけど実力不足」春奈
「とにかく、相手にならないね」晃子
「誰も、相手になるとは思っていない」春奈
「可愛いのは顔だけか」晃子
「・・・それ以外がね・・・」春奈
二人のゴチャゴチャ話、主に華奈への文句話を、小沢は頭を抱えて聞いていた。




