第20話フルーツクリームサンド?と春奈の分析
「確かに豪雨だ・・・今日はあきらめる」
「でも・・・それなら、明日にでもどうかなあ」
キャプテンはそこで粘った。
顧問も頷いている。
「うーん・・・」
光は思案する。
もともとあまり体力を使うことは好きではない。
というより「面倒」という言葉が頭の中を駆け巡る。
「まあ、明日の放課後少し見るだけなら・・・」
光は、あまりしつこくされるのも面倒なので「少し見るだけ」ということで一応了承した。
顧問とキャプテンは、ニヤリと笑い戻っていく。
「まあ、たまにはいいんじゃない?」
「ボクシング部に入るとか入らないとかの話にはならないだろうから」
春奈先生は軽い反応である。
結局、良夫は光が保健室に連れていくことになった。
「あの人たちボクシング部って・・・というか、ここの学校の先生も生徒も自分本位なの」
「自分のボクシング部の部員が乱暴して、返り討ちにあったんだから、責任を持つのが当たり前だけどね」
良夫を手当てしながら、春奈先生はあきれている。
「いや、しょうがないですよ、恥ずかしいところ見せちゃったんだから、見捨てられても」
良夫が涙目になっている。
負けると案外弱いタイプのようである。
「それにしても、全くかすりもしなかった」
「本当に光君、本当に何もボクシングをやったことないの?」
良夫は素直な目になっている。
「うん、全くない」
そう言いながら光はサンドイッチを頬張っている。
「うん、この子、よく倒れるでしょ」
「その時見るけど、全く筋肉無い、ただ逃げ足が速いだけさ」
春奈先生が答えている。
光としては、「そこまで言うの?」で、それはそれで恥ずかしいものがある。
春奈先生は、光への「文句」をさらに続けた。
「だいたいね、お昼にフルーツクリームサンドだよ」
「お菓子を食事代わりにするなんて、ありえる?」
春奈先生は、サンドイッチの種類まで見ているのである。
しかし、何をお昼に食べようと光の勝手のはずである。
大きなお世話と言いたかったが、引っ込み思案な光の性格ではとても言うことが出来ない。
「じゃあ、授業だから」
いたたまれない光は春奈先生から逃げるように保健室を出た。
心配そうに見守っていた女子学生たちも一斉に光と教室に戻る。
さて、その翌日から、フルーツクリームサンドの売り上げが、莫大なものとなったことは言うまでもない。
春奈は、良夫が光に襲いかかる時から、じっと見ていた。
「まあ、結果はわかりきっていたけど・・・」
光には阿修羅の力が加わっている、いや乗り移っていることは、わかっている。
いわゆる「闘いの力」、「悪を察知する力」というものにおいて、阿修羅を超える力は存在しない。
それ故、良夫程度の力では、どうにもならないことはわかっていたのである。
問題は、良夫の「負け」程度である。
阿修羅が本気を出した場合、かなりな怪我あるいはそれ以上のことが想定されるのである。
「まあ、阿修羅は本気を出さなかった、相手にもよるけど・・・」
それはそれで、春奈はホッとするものがある。
良夫の怪我の程度も、幸いたいしたことはない。
包帯をしっかり巻いて、良夫を教室まで送っていった。




