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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第198話悪魔の意図 文化祭の練習開始

「その念といいましょうか、悪魔の念が、正邪の反対呪文から再び強くなっています」

「その念が、おそらく阿修羅との闘いを欲している、今、阿修羅を宿すことのできる男の子が弱いうちにと考えていると思われます、今倒せば、また数百年は悪魔の力は持つ」マルコ神父


「何でも悪魔のしたい放題、東京大空襲、広島・長崎の原子爆弾投下にせよ・・・」校長


「カタリ派の時も日本の大災難の時も阿修羅はいなかった、ただ阿修羅が何故か、今出てきてしまった。だからまだ、本当に強くなる前に・・・その意味で偵察でしょうか、小物が既に少しずつ入ってきています」

「彼らに対抗できるのは、阿修羅だけです、残念ながらカタリ派の時は血筋が絶えていて、何もできなかった」

「だから阿修羅を宿すことのできる光君を絶対に守らなければなりません」

校長は講義を終えて、再び十字を切った。



「すごく怖いんだけど」

春奈は、家に戻り光と食事をしている。

頭の中では、校長とマルコ神父の話が、何度も繰り返されている。

それなのに、全く平然と食事をしている光が不思議である。


「ねえ・・・少しは反応してよ」

春奈は、問い詰めようかと思うが、話のあまりの怖さに声を出せなくなった。

確かに奈良では地蔵様が結界を張り、光の通学路にはマルコ神父と相模寒川神社が結界を張ったとのこと、

また、校長とマルコ神父によりあちこちの教会や寺社に結界を張る。

その意味では、それほど今すぐに事件が起こるとは考えにくい。

しかし、不安であることには変わりがない。


「・・・何が怖いの?」

ようやく、口の中のご飯を飲み込んだ光が、口を開いた。

こんな怖い時に、食べることまで「亀」でなくてもいいと思うが、光の表情自体は全く変わりがない。


「だってさ・・・朝の校舎入口の一件とかさ、校長先生とマルコ神父の話だってさ・・・」

春奈は、光の「亀」反応が面倒なので、阿修羅に直接聞いてみようかと思った。

光は仕方ないとしても、阿修羅ならもう少し、しっかりとした受け答えをすると考えたのである。


「ああ、全然大丈夫だよ、全て計画通りさ、滅びの道に進むのはあいつらのほうだよ」

「それから、今回は、珍しいお方を呼んだ、楽しみだなあ・・・」

突然、光の目が光った。

そして、不思議なことを言っている。


「計画通り・・・珍しいお方・・・とは?」

春奈は、姿勢を正した。

どう考えても阿修羅が語っている、そう確信した。


「とにかく、結界を張ってもらって、一気にカタをつけるのは、小物をいちいち相手にしているのが面倒なのさ」

光、いや阿修羅は、少し笑った。


「ああ、だから心配ないよ、春奈さん」

「それから、料理の味付けなんかで、そんなに悩まないでいい」

「ひと昔前は、仲良しの夫婦だし」

阿修羅はニコッと笑った。

春奈は、その笑顔を見て、真っ赤になった。


「うん、結界が強すぎて何もできないって、あのゴツイ力士が怒っているぐらいさ」

阿修羅は、ニヤリと笑った。

そして阿修羅の言葉通り、クリスマスコンサートの日まで、悪魔の出現はなかった。




音楽部の文化祭を目指しての練習も始まった。

曲目はモーツァルトのフィガロの結婚序曲。

興味があるのか、軽音楽部部長久保田や、合唱部の由紀、校長まで聞きに来ている。


「うん、かっこいい、まるでロックみたい」久保田

「盛り上げ方が、小気味いいなあ」由紀

「とにかく歯切れがいい、スピード感っていうのかなあ」校長

「うん、下手に振ると本当にダサイ音楽になるんですが、キラキラしている、これだけで終わるのもったいないくらい」

祥子先生も、あまりの曲の短さに、何か考えているようだ。


「それなら、合唱部とコラボはどうですか?」

校長から声がかかった。


「うーん・・・合唱部はコンクール前ですし、どうなんでしょう・・・」

祥子先生も、そう言われても少しためらうようだ。

「音楽部の出番は最後ですし、おそらくアンコールかかりますよ、このフィガロの出来だと」

久保田は、アンコール曲の心配までしている。


「そうだねえ・・・光君に何か考えてもらうかなあ・・・」校長

「うん、軽音楽部と合唱部のコラボで、あれほど面白いこと考えるんだから」久保田

「そうだねえ、合唱部もあまりコンクールを考えすぎかも」祥子

「コンクールのための合唱部ではないですし」校長

「我々軽音楽部からすれば、コンクールがないから、好きに楽しく音楽をしているって感じです」久保田も、順位のための音楽に疑問を感じているようだ。


「そうね、技術を磨くためのコンクール練習なら仕方ないけれど・・・」

祥子もかつては、コンクールのための厳しい練習に明け暮れた時期がある。

確かに、正確な演奏をするには、高い技術が必要、技術を磨くための練習も必要である。

コンクールの審査も減点主義で、あくまでも正確、ミスのない演奏が最低限求められる。

その意味でミスを恐れて音楽性そのものが、小さくまとまることも、仕方がない。

ただ、全員がプロを目指すこともない、高校生のレベルまで、その練習方法を強いるのは酷だと考えている。

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