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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
195/419

第195話光の別の顔

「うん・・・」

春奈は、安心と不安の両方を抱えていた。

「それにしてもなあ・・・」

光のことについて、知らないことが多すぎると思った。

確かに、本当に小さな頃、奈良町に光が行った時のことは、母や圭子叔母さんたちが、よく知っている。

しかし、光は、ほとんど杉並の家で暮らし、育っている。

その意味で、一番長い時間、光に接してきたのは、隣に座っている由紀なのである。


「少しウカツだったかも」

春奈は、反省した。

あまりにも奈良町の目線で、光を捉え過ぎていたと思った。

光が夏の熱中症で倒れた時は、奈良名物の茶粥しか、思い浮かばなかった。

「もともと、奈良町の血だから」という理由である。

しかし、光にとっては、「子供の頃に食べた懐かしい味」であって、本当に食欲をそそる味だったのか・・・

由紀のお弁当の味を覚えているのも大きい。

最近は、鎌倉のカトリック教会で光はかなり、磯料理を食べた。

旧知のニケのある意味強引な食べさせ方もあったけれど、それでも量的には、普通の人並みに食べていた。

いつもの、春奈の料理では、小学生並の量を必死に食べている。


「本当にお魚、新鮮だったから私たちも食べたけれど」

春奈は、考え込んだ。

もともと、奈良に海はない。

それ故、新鮮な海魚を食べる習慣は、ほとんど無かった。

今でも、夕飯のおかずに、生魚を買って帰ることは少ない。


「光君のお母さん、どんなものを作っていたのかな、同じ味は難しいにしても、もう少し食べさせないと・・・」

春奈は、思い余って光の父、史に聞いてみることにした。


「うーん・・・菜穂子の料理ですかあ・・・」

「私は、あまり家で食べたことがなくてね、いつも菜穂子と光だけだったかなあ・・・」

しかし、全く拍子抜けするような、史の応えである。

「あ・・・そういえば、菜穂子の本棚のどこかに、レシピを書いたノートがあるかもしれない」

「ねえ、本当に愚息で。ご迷惑ばかりおかけしまして・・・親子ともどもで・・・」

史も、必死に謝っている。


「・・・もう・・・ほったらかしにするから、こうなるの」

春奈は、史の言葉に少し腹が立ったが、とりあえず、菜穂子のレシピノートを探すことにした。




「へえ・・・シカゴの素直になれなくてかあ・・・」

授業開始前の光のクラスがいつになく盛り上がっている。

「うん、いろいろあるけれど、文化祭とかコンサートでも使えるかな」光

「あとは?」由紀

「えっとね・・・」

光は、鞄から一枚の紙を引っ張り出した。


「へえ・・・」

その一枚の紙にクラス全員が群がっている。


「セサミ・ストリート」

「カーマにおまかせ」

「タキシード・ジャンクション」

「セイブ・ザ・ワールド」

「レイラ」

・・・・・・・・・・

その他にも、様々なポップ、ジャズ系の名曲が書かれている。


「うーん、何か面白そう」

「アレンジもいろいろ工夫できそう」

「早くコンサート聞きたい」

「いや、まだ練習もしてない」

いろんな、期待する声があがり、光も微笑んでいる。


「ねえ、光君」

由紀が光に声をかけた。

「え?何、選曲変だった?」

光は由紀の顔を見た。


「いや、全部面白い、コンクールの自由曲変えたくなった」

由紀は真顔である。

「でも、それは・・・時間がないよ」光

「いや、そんなことはない、今日明日で編曲して、次の練習に間に合えばいい」

由紀は、一歩も引かない。

「あくまでも、コンサートで考えたんだけど・・・何がいいかなあ・・・」

光も考え出した。


「あ、昼休みに、祥子先生とか、合唱部部長の浜田さん、軽音楽部の久保田さんとか集まってもらって」由紀

「うん、そのほうがいいね」

光はにっこりと笑った。

「うん、うれしい、舞夢君、少し昔の顔になった」

由紀も、うれしそうな顔になる。

「その・・・昔の顔って、おじいさんってこと?」光

「あのね・・・どうして耳がいい加減なの、子供の頃みたいな顔ってこと」

由紀は、光に突っ込みながら、本当に嬉しそうである。

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