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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第189話光と由紀の接近

放課後の音楽室で、軽音楽部のコンサートについての打ち合わせが行われた。


「一応、日程は十一月の上旬、ここの学園のホールということで、どうでしょうか」

校長から日程と、会場について提案が出された。


「そうですね、急な話ですので、なかなか他のホールは抑えられませんし、ここの学園のホールも、音響はしっかりしていますので」

祥子先生も含めて誰も異論は唱えない。

何しろ、急な思いつきのコンサートなので、ここの学園のホール以外には、今から予約は不可能である。


「それから曲は、どうしましょう?」

軽音楽部部長清水は、一応校長と祥子先生の意向をうかがう。


「うん、ここの学園の生徒さんたちの、ご両親にも来てもらいたいので、年齢関係なく聴けるのがいいかなあ、それにしてもあまり古くなくてもいいよ」

校長も、あまり古びた音楽にしたいとは、考えていないようだ。


「そうねえ・・・だいたい、校長先生の若い頃って、けっこうハードロックとかありましたよね」祥子先生もいろいろ考えているようだ。


「どうせなら・・・合唱部もはいってもらったらどうですか?」

突然、光が提案をした。

「え?合唱部が?コンクールの前だけど?」祥子

「ああ、本番の練習にもなりますし、ここの学園内でのコンサートなので、特に問題が無いかと」光

「うん、刺激になっていいかもしれない、コンクールの曲の練習一辺倒では、余裕が無さすぎるしね」校長

「うん、アカペラとかでもきれいなのがあるかなあ」祥子

「ところで、光君がどうしてもやりたい曲ってある?」久保田

「そうだねえ、光君自身がさ、決めた曲がいいな」校長


「えっと・・・考えているのは、合唱部全体とか、数人とかを入れて、音に厚みを持たせたいなあと、曲は、まだ浮かんできません」

光は何か考えているようだ。

「うん、それなら、なるべく早く考えてきてね、アレンジも一緒にしましょう」

祥子が光の顔を見ると、光は確かに頷いた。


「うん、少しだけ変わってきたかもしれない、心が開き始めたようだ」

校長は、その意味でホッとしている。



「へえ・・・そうなんだ、軽音楽部に合唱部をジョイントねえ・・・」

今日の下校は、春奈と一緒になった。


「そもそも、どうして合唱部なんて考えたの?」春奈

「ああ、それは、由紀さんに文化祭での合唱部の指揮かピアノを頼まれていて、ついでに出てもらおうかなあって、コーラスが加わったほうが、音に厚みがでるなあと思って」

光にしては、積極的な発想である。

夏前の、いい加減さしかなかった光としては、大きな変化である。


「ところでさ、合唱部自体は、そのこと承諾したの?」春奈

「ああ、それは校長と祥子先生から、合唱部の部長に、ということだそうです」光

「じゃあ、本決まりではないんだ」春奈はホッとした顔になる。


「何か問題でも?」

光は不思議そうな顔をする。


「えっと・・・いや・・・」

春奈にしては、珍しく口ごもった。

春奈は、まず華奈の「口を尖らせた顔」が、目に浮かんだのである。

軽音楽部と合唱部に光を独占され、必ず華奈は、すねる。

あるいは、泣くかもしれない。

そして最近光の相手として、妙に由紀が気にかかる。

今までは、由香利や華奈、ルシェールに隠れて目立たない存在だったのに、光自身が由紀の頼みを聞いて、軽音楽部と合唱部とのジョイントまで話を膨らませてしまった。

結果は、確定ではないが、どうにも気にかかる。


由紀は、それなりに美形であるが、華奈やルシェールのような「とびっきりさ」はない。

長所とすれば、逆にその普通さと、話のしやすさかと思った。

「源氏物語で言えば、明石の君かなあ・・・」

わきまえの達人、明石の君を思い浮かべた。

由紀は、光のストレスを上手に緩和しているのではないか・・・そんな感じである。


「案外、強敵かも」

春奈がそんなことを考えていると、光がスマホを取った。

「ああ、ありがとう、じゃあ、早速考えておくよ」

光は、にっこりと笑って応えている。


「え?誰から?」

滅多にすぐに電話に出ない光が、電話を取り、お礼まで言っている。

春奈としても、信じられない。


「ああ、由紀さんでした、合唱部全体でOKだそうです、曲は明日、相談するって」

光は、にっこりと笑っている。

「うーん・・・明石の君、恐るべし・・・」

春奈は、うなった。

そして、次に華奈の顔が浮かんだ。


「華奈かあ・・・また、すねるな、きっと」

「・・・でも、いいや、いい気味だ」

「笑い飛ばしてあげよう、また楽しみが増えた」

春奈は、ニンマリとなった。

結局「小娘華奈」など、目にもくれないのである。


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