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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第177話急に真面目になる光

「そうなんだ、良かったね」

家に戻り、春奈は光から話を聞いて少しホッとした。

肩の力も少し抜けた。

二年生の九月当初にほぼ進学が決まり、その意味では大きな心配の一つがなくなった。

そして、すぐに奈良の圭子に電話をかけた。

亀の光からの電話は期待ができないためである。


「あはは、良かったね、でも携帯の件はさ、史さんと光君らしくて面白いよ」

圭子も大笑いにな。

ただ、かわす言葉の中に、圭子も安心し、喜んでいることがわかる。


「へえ・・・光君、タキシード着るようになるのかな」

「手伝いで私も東京住むかなあ、母さんは奈良において、都内の大学受験する」

「だから私が一緒に住むから、春奈さん、いなくてもいいよ」

楓も喜んでいる。


ただ、楓の「いなくてもいいよ」発言は、即座に却下した。

「合格もしないうちに、おこがましい」

言い終えて、勝ち誇り感を覚えた。

ただ春奈の心中限りであった。

楓は、後日「何も聞いていない」と言い張ることになる。


ただ、あまり光の顔が浮かない。

光にとっても、嫌がっていたレスリング部ともほぼ決着がつき、進学も決まった。

そのうえで、あとは勉強と好きな音楽をやる程度だし、明るい顔で当たり前と思う。

「どうして、面白くない顔しているの?」

黙っていては話が進まない。

春奈は、単刀直入に聞くのが一番だと思った。


「うーん・・・クリスマスのコンサートに、軽音楽部のコンサート、文化祭」

「それに小沢先生が、レッスンにおいでだって、寒くなるしさ、朝寝坊できないし」

「みんな、期待してくれるのは、うれしいけれど・・・」

ブツブツ言い始める。


「要するに面倒ってこと?」

またしても、春奈は呆れてしまう、語調もキツクなった。

どうして、これ程の幸せな状況で、ブツブツいうのか、理解しがたい。


「春奈さん・・・ごめんなさい」

呆れる春奈に、光が突然謝った。

「春奈さんじゃないと、こんな愚痴言えなくて・・・」

光は、反省したような、恥ずかしそうな顔をする。


「ああ、言い過ぎた、ごめん、いいよ、何でも聞いてあげる、光君」

春奈も突然の変化に少し焦った。


ただその後は光から愚痴の言葉は聞かれなかった。

とにかく熱心に勉強をし、様々な練習に積極的に参加した。



「ねえ光君、疲れたら休んだ方がいいよ」

急な光の変化に、春奈も心配した。

確かに怠け者は問題があると思ったが、もともと体力が不足する光が急に頑張ると、途中で倒れるリスクを強く感じる。

それでも、光は「頑張り」を止めない。

朝早くから、夜遅くまで勉強と音楽に励む。


これには、華奈も不安な顔になった。

「ねえ・・・光さん、前のほうがいいよ」

「怠け者ぐらいが、余裕があっていい、今、顔蒼いよ、後で絶対倒れる、そんなのやだ」

華奈も、顔を蒼くしながら歩く光を心配する。


時々来るルシェールも心配を隠せない。

「本当に危ないよ、急に動いちゃだめ」

「動いている割に、食事の量減っているし」

ただ、何を言われても光の動きは変わらなかった。

楓とルシェールが心配するように、顔は蒼みを増し、食事の量も減った。

次第に笑顔も見せなくなった。


春奈はあまりにも不安を感じ、とうとう奈良の圭子に電話をかけた。

「そうかあ・・・」

「男の子ってさ、そういう時あるよ」

「寝食忘れて、何かに熱中することあるの」

「でもね、それが長くなって、顔が蒼くなるって・・・心配だなあ」

圭子も不安げな声になった。


春奈は、医師でもある母、美智子にも相談した。

途端に叱られた。


「あれほど、言ったのに何やっているの!」

「愚痴を言わなくなったのは、みんなの期待に応えようと無理に心を閉ざしたから」

「それでも、食欲あれば身体は持つけど、それが無いんじゃ・・・危ないなんてもんじゃないよ」

「だいたい、ルシェールとナタリーの料理をあれ程食べても、血色悪いんだよ」

「あなたがしっかりしないと、本当に危なくなるよ!」

春奈の母美智子は泣きながら怒っていた。


少し落胆してソファに座っていた春奈に、ルシェールの母ナタリーから電話が入った。


「きっとね、光君、子供からまず少年になるの」

「阿修羅で言えば、左耳についた、少し遠くを見つめた哀し気な顔に変化していると思う」

「とにかく、みんなで支えよう、あなたばっかり苦しんでもしょうがないよ」

優しいナタリーの言葉で、春奈は涙が止まらなくなった。

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