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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第169話楓vs圭子、ルシェールの強さ

「あ・・・そうだった」

「着替えなきゃ・・・」

光は、ようやく「亀」の動きから進化した。

それでも「芋虫」状態、亀と大して変わりがない。

ベッドのわきに置いた着替えの服を手に取るのに、十分以上かかっている。


その光の動きを途中まで見て、従妹ながら同学年の楓は姿を消した。

「もう、子供じゃないから、着替えは手伝ってあげない」

「早くしてね、母さんも春奈さんのお母さんも、待っているからね」

その言葉を言い残して、楓は階段を下りて行った。

結局、高級アイスが光の口に入ることはなかった。


「あれ?朝からアイス?」

階段を下りた楓に、圭子に声をかけた。

「えへへ・・・昨日食べられなかったし、朝のアイスは美味しい」楓

「ふーん、朝から脂肪分ね・・・」圭子

「何よ、その遠回しの言い方、若さへのジェラシー?」楓

「いや、雅、最近腰回りが立派だよね・・・」圭子

「・・・そう?セクシーになった?」楓

「まさか・・・その脂肪がお尻についただけ、他はなーんにも」圭子

やっと着替えおえた光が、階段を下りづらい会話がしばらく続いた。


光は、何とか朝ごはんを食べ、春奈の家に向かった。

今日は春奈の家で、春奈の母美智子の手料理を食べてから、一旦この家に戻る。

そして東京には、春奈と帰る予定である。


「おはようございます」

光にしては明るい声で、春奈の家の玄関に入った。


「あらあら、光君・・・」

春奈と、春奈の母美智子が一緒に出て来た。


「さあさあ・・・あがって・・・」

美智子は、いきなり光の手を取った。

そのまま引きずってリビングに招き入れる。


「うーん・・・歳のわりに手早いし、私より強引かも・・・」

春奈は呆れて見ている。


「本当に、あの時はお世話になりました」

「しっかりとお礼も出来なくて・・・」

光は、珍しく神妙に頭を下げている。


「うん、助けてあげられなくてごめんね・・・」

「私も、情けなくてね・・・」

「あの時の菜穂子さんの目を閉じた顔と、光君の大泣きになっている顔が、今でも夢に出てくるの、本当に可哀そうでねえ・・・」

美智子は既に泣き出している。


光はうつむいたままである。

春奈は、おそらく、その時のことを思い出していると思った。

春奈にしろ、他の人にしろ、光の心にどうしても入り込めない部分がある。

おそらく、その時のことが光の心に大きな傷を作っていることもわかる。


「でも、どうしたら、光君、心から笑うんだろう・・・」

春奈は、美智子の手料理を一緒に食べながら、ずっと気になっている。

「でもいいや、少しずつ・・・」

ぽつりとつぶやいた春奈の言葉に、美智子は頷いていた。



帰りの近鉄奈良駅には楓が送ってくれた。

「あのね、うちの母さんと、美智子さんと、美紀さんとナタリーは、ちょっと打ち合わせをするんだって、だから、みんなの手料理は夕飯に食べて」

楓はどっさりと様々な料理がはいった大袋を光に渡した。

「ほら、私が持てるぐらいの重さで、よろけない、高校二年の男子!」

光がよろけた途端、楓の叱声が飛ぶ。


「ああ、それなら、許嫁の私が責任を持ち・・・」

今までどこに隠れていたのか、華奈の突然の登場である。


「あれ?お母さんと帰るんじゃないの?」春奈

「許嫁は言い過ぎ、ルシェール登場で時効」楓

「まだ父兄同伴の年齢では?」春奈

「フレンチトースト独占して怒られたこと知っている」楓

またしても、改札口の前で攻防戦になっている。

重い袋を持たされたままの光は、ゼイゼイと息をしている。


「あのさ、あんな年増連中に、この若くて可愛い華奈が付き合いきれるっておかしくない?」華奈

「うん、あの人たちの口の悪さは、魔女だ」楓

「やたら手が早い」春奈

「変に大人のフリをして、食べ物を強制する」華奈

「そう、アイスをこれ見よがしに食べる」楓


「まあまあ・・・お嬢さんたち・・・もう一人、お見えですよ」

それでも大人の春奈は、誰かに気づいたようである。


「あ・・・ルシェールも?」楓

「わあ・・・悔しいけどきれいだ」春奈

「光さん、お荷物お持ち・・・」華奈

しかし、華奈の言葉はそこまでだった。


春奈と楓がルシェールに見とれている隙に光から荷物を取り、ルシェールの上を行く「実績作り」を狙ったのであるが、あっという間にルシェールは光の横に立ってしまった。

そして、そのまま大袋を手に取った。


それにもともと、ルシェールの手荷物は、ほとんど無い。

「ああ、旅慣れた人は、不要な荷物持ちません、日本人は持ち過ぎ」

そのまま、光と腕を組んで歩き出している。

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