第166話金剛力士の大活躍
「よく意味がわからないが・・・」
光の目が光り出した。
口調も全く変わっている。
「お前たち二人の馬鹿気た事情など、知ったことではない」
「少なくとも、無抵抗な鹿を捕まえ痛めつけ、それを止めようとした人々に暴行を働いたのは、お前たちだろう、治安を乱したのはお前たちだ」
「その意味で、ここで土下座もレスリングなど関係がないだろう、お前たちの言動はおかしいぞ」
光は厳しく見据えている。
春奈、楓、華奈は、ようやく光の後ろに立った。
何しろ人が多く、かき分けることも大変だった。
「うわ・・・すご・・・」春奈
「可哀そう・・・鹿に何の罪もないのに」楓
「光さん、本当に怒っている・・・怖いぐらい」華奈
「うん、身体の周りに・・・」春奈
「蒼白い・・・光」楓
「ここで始めちゃうのかな・・・」華奈
光は両腕を左右に開いた。
そしてゆっくりと身体の正面で合わせる。
「う・・・合掌のポーズだ」春奈
「震えて来た・・・」楓
「相手も何も動けないみたい」華奈
しかし、光は突然動きを止めてしまった。
「でも、あれ?合掌やめたよ」春奈
「うん、身体はまだ光っているけど」楓
「えーーー?まさか・・・・あの二人出て来ちゃった!うそでしょ?」
華奈は春奈と楓の顔を見た。
「うん、光君、嫌そうな顔している」春奈
「邪魔されたと思っているのかな」楓
「はじめて見た・・・金剛力士様・・・」
華奈が大興奮している。
「おい!何だ、その二人!突然現れやがって!」
光の合掌のポーズに動くことが出来なかった村田が騒いだ。
「いったい・・・あなたがたは?」
カルロスの顔も変化している。
少なくとも、光に対した時のような、ニヤケ顔ではない。
突然光の隣に並び立ったのは、それぞれ身長が二メートルもある大男。
上半身は裸形、見るからに筋肉が盛り上がっている。
下半身は、不思議な紋様をしたズボンのようなものをはいている。
そして何より、顔が厳めしい。
光の顔と比べるとまるで野獣。
「・・・邪魔だてを・・・」
光が明らかに嫌そうな顔になる。
「ふん、自分だけ、楽しい思いさせられるか・・・」
おそらく金剛力士の阿形である。
しかし、楽しそうな顔になっている。
「地蔵さんに、取り入ったのか?」
光は吽形に尋ねる。
「おい、吽形に聞いても答えないぞ」
阿形はからかうような笑みを浮かべた。
その言葉通り、吽形は頷いているだけである。
「いや、たまには吽形の声を聞きたくてさ」
光は笑っている。
「さて、頼むよ、たまには実戦だ」
阿形が光の顔を見た。
そして、頭を下げて光に頼んでいる。
「そうだな、こんなことになったのも、お前たちの不始末だ」
「責任を取れ」
光は両隣の金剛力士を鋭く見つめた。
「ふん、相変わらず口が悪い」
「まあ、責任を取るほどの相手じゃないが・・・」
阿形の言葉と同時に吽形も構えを取った。
「手伝ってもいいぞ」
光は阿修羅のポーズを取ろうとする。
「だめだ、おれたちの楽しみを奪うんじゃない!」
その言葉の瞬間から阿形と吽形は旋風のごとく動き出した。
そして、スペイン系集団の男たちを、むんずと掴み投げ飛ばし始めた。
「わっ・・・」春奈
「すごい!何の抵抗も許さない」楓
「あっという間だよ!」華奈
華奈の言葉通り、一瞬で教会前の広場にいた体格のいいスペイン系集団は、山のように積み重ねられている。
そして、その男たちの上に金剛力士二人が乗っている。
というよりは足で踏みつけである。
村田やカルロスの姿も見えるけれど、既に口から泡を吹いている状態。
その姿を見て光は苦虫を噛みつぶしたような顔になっている。
「まったくゴツイやり方だ、品が無い、何でもあいつらは力づくで・・・」
「ここはこうするべきだ、全く・・・」
ブツブツ文句を言いながら、何か不思議な呪文を唱えている。




