第149話校長の正体
校長室のソファに理事長、柔道部顧問山下、柔道部員斎藤が座っている。
「御見苦しいところをお見せいたしまして」
校長は理事長に頭を下げている。
「いやいや、無事でよかった。」
「特に光君というのかね、すごい才能だなあ」
「音楽部のコンサートでも、本当に感激したよ、そのうえあんな格闘まで強い」
理事長は、光をほめている。
「それに、あんなレスリング部顧問など気にすることはない」
「そういう変な奴が出たら、どんどん理事会に報告してくれ」
「君もよくやっている、心配するな」
理事長は、校長の不安を簡単に消し去った。
校長も安心した顔になる。
「ところで今日の出張は?」
理事長は校長に尋ねた。
今日は文部科学省主催の会議への出張のはずである。
「ああ・・・それはですね、副校長を代理に出席させました」
「文部科学省主催といっても、数百人集まる会議です、特に意見を求められる訳でもないですし、お役人の御高説をお聞きして、膨大な資料を持って帰るだけですから」
校長は笑っている。
「そうか・・・あの役人連中の御高説か・・・」
「どうでもいい会議だな」
「役人の実績作り、会議をやるための会議だな」
「資料も多すぎ、細かすぎて結局読み切れない」
「そんなことで、高校生をコントロールできるわけがない」
「役人とか会議のために高校生があるわけではない」
「高校生のために、役人とか会議があるのに、さっぱりわかっていない」
理事長も笑った。
どうやら理事長もかつてはこの学園の校長、経験が何度もありそうである。
「ただ、今日の午前中、どうしても何か不安を感じましてね」
「それで出席を副校長に頼みました」
校長は声を低くする。
「うん・・・君のその能力は昔から知っている」
理事長も声を低くした。
「それでも君が残っていてくれて私を呼んでくれたから、即座に処分が出来た」
「君の能力は、捨てがたいよ、さすがだなあ・・・」
理事長は腕組みをしている。
「あの・・・」
じっと聞いていた柔道部顧問が口を開いた。
特に「校長の能力」について、全くわからないようである。
「ああ・・・ごめんな・・・あまり人に言うことではないけれど」
理事長はその唇に人差し指を当てた。
どうやら極秘のことらしい。
「この校長の家系は代々クリスチャン、カトリックだ」
「それで単なるクリスチャンではない」
「エクソシストの家系さ、だから危険を察知する能力は非常に高い」
理事長は、信じられないようなことを簡単に言ってしまう。
これには、そんな知識がない柔道部顧問山下も斎藤も対応が出来ない。
返す言葉が無いのである。
「まあまあ・・・理事長、映画の見過ぎですよ」
校長は首を横に振った。
ただ、笑顔が明るい。
「まあ、冗談はともかくとして、山下顧問と斎藤君」
校長は山下と斎藤に声をかけた。
「はい・・・」
山下と斎藤の出番がやっと始まった。
そもそも、何故校長室に呼ばれたのかわからなかった。
「レスリング場で、前田君の姿が見えた」
「うん、あの自称格闘王さ」
「前顧問の村田とトラブルになって、都大会には出場できなかったけれど」
校長の顔は真剣である。
「はい・・・」
山下も斎藤も、前田が都大会に出なかったことは知っていた。
ただ、前顧問村田とトラブルになったことは知らなかった。
確かに「几帳面な理論派」の村田が「自らのレスリング理論を否定する」前田を嫌うのは理解できる。
しかし、誰もが認める実力者前田を都大会に出場させないのは、度を越えていると感じていた。
「おそらくね、前田君は光君に攻撃を仕掛ける」
「高田君の敵討ちとしてさ」
「校外とは言わない。校内で不穏な動きがあったら、対処してもらいたい」
「止めるだけでいい」
「責任は、校長、重くなったら理事長が取る」
校長の言葉に理事長も頷いている。
「わかりました、私たちも光君の警護を坂口さんから言われていますし」
柔道部顧問山下と斎藤が頷いた。
「ありがとう・・・」
「光君の中には、とんでもない神がいる」
「何しろ本当に怒ったら、誰も止められない、人では無理」
「前田君の命だって危ない」
校長の言葉に、校長室にいる全員が頷いている。




