第147話vsレスリング部(3)決着
しかし、何故か斎藤、柔道部顧問山下、そして春奈は笑っている。
「フン!」
高田は光に向かってローキックを放つ。
しかし、当たる寸前に光の身体がそこにない。
「逃げやがって!」
高田は、ローキックを続けるが、全く当たらない。
光は面倒くさそうな顔になっている。
既に両手はポケットの中、ついにはあくびまでしている。
「許せねえ!」
高田の顔に怒りと焦りが浮かんだ。
ローキックとハイキックを連発し、ジャンプして蹴ろうとするが全く当たらない。
「それなら・・・」
都大会でも評価された自慢のタックルを仕掛ける。
「タックルなら触るぐらいは出来る」
「掴んでしまえば、こんな華奢な光なんか楽勝」
そう思ってタックルをしかけるが、そのたびに光の姿が消える。
「どうなってるんだ」
あまりの張り合いの無さに高田は立ち尽くしてしまう。
息も荒い。
身体全体が疲労困憊になった。
そこに光が近づいていく。
高田も、光に合わせて蹴りを繰り出した。
「あっ!」
光以外の全員が息を飲んだ。
光の右足が高田の足に触った。
次の瞬間、高田の身体が宙に舞った。
そして頭からマットに突っ込んだ。
高田は、すでに失神し、口から泡を吹いている。
校長が入って来た。
少し厳しい顔をしている。
「あ・・・校長・・・」
予想外の校長の出現に、レスリング部顧問村田は、たじろいだ。
しかし、村田も必死の抗弁を考えた。
「校長!とんでもない不届者が、この学園にいます」
「あろうことか、自らのクラスの前に女子学生を集め、交通の遮断をする」
「しかも、それを職務怠慢として、まずは風紀委員の野村に注意した私のところに、徒党を組んで押しかける」
「その上、突然神聖なマットに上がり込んで、都大会二位の優秀な高田に暴行まで行いました」
「もう、こんな不品行で乱暴な光は即刻退学にするべきです」
誰から見ても唖然とする抗弁を行う村田であるけれど、この言葉自体に酔っているようだ。
「それに不躾にも、教師である私に、睨み付けるような顔をして質問した柔道部の斎藤」
「そして、教師として本来止めるべき職務を放棄して、何もしなかった柔道部顧問山下」
「その両名についても、即刻退学及び懲戒解雇処分を行ってください」
先程までのたじろいだ顔は、全く消え去っている。
むしろ、自信に満ちた顔で光他全員を見ている。
「野村君・・・」
しかし校長は、すぐにレスリング部顧問村田には答えなかった。
まず野村を呼んだ。
「はい・・・」
のどを抑えながら野村は校長の前に来た。
「何の理由でレスリング場に?」
校長が尋ねた。
「ああ、それは突然三年生の高田さんがクラスに来て村田顧問が怒っているって言われて」野村
「うん」校長
「それで、レスリング場に来たら、突然左脚を蹴られて、びっくりしたら次に喉を蹴られて」
「・・・うん・・・それで村田先生は?」校長
「ああ、見ていました、こうすれば光君が必ず来るって言っていました」
「それから光君の後ろに、たくさんついてくると」
「そして来たら全員の前で徒党を組んだという校則違反で叱って、それでも何か反発したら高田さんが無礼って言って光君にレスリングの教育的指導を行えって言っていました」
野村はいまだに咳き込んでいる。
校長はレスリング部顧問村田に向き直った。
「村田さん」
校長の言葉から村田の肩書が無くなった。
村田も怪訝な顔になる。
少なくとも、未だ自らの不始末や責任を感じていない顔。
「いや、村田ではなくて、レスリング部顧問村田でしょう」
「正規な肩書でお願いします、貴方だって校長なんだから、それぐらいは理解しなさい」
村田は校長にまで、肩書で名を言うよう指示している。
「いや、もう村田さんです」
校長は首を横に振った。
これには村田も再び怪訝な顔になる。
「ここに理事長がおられます」
確かに校長の隣に理事長が立っている。
「理事長権限で、貴方は理由のない暴行指示で懲戒解雇、高田君は暴行行為で即刻退学です」
「理事長も私も最初から見ていました」
「重大な校則違反を行ったのは貴方たちです」
村田は、ガックリと肩を落としている。




