第130話阿修羅の思惑?
またしても炎天下になった。
楓と圭子は、コンサート翌日の朝、奈良に帰る。
春奈と華奈、少しふらついている光は井の頭線の駅で見送った。
「じゃあ、春奈さん、お願いね」圭子
「倒れないようにしっかり食べてね」楓
「華奈ちゃん、しっかり見張ってね」圭子
「春奈さん、面倒だったら、あの家で暮らしたら?」楓
「とにかく、また何かあったらすぐに連絡をお願いします」圭子
「すぐに飛んできます」楓
いろいろと心配して、声をかけてくる。
「本当にありがとう」
弱々しい、いつもの光の口調。
それでも、お礼を言った。
「また、奈良にも行きます」
光は微笑んだ。
途端に圭子と楓が泣き出した。
そして手を振って改札口から消えていった。
「叔母さんも楓ちゃんも寂しいんだよ」春奈
「私だって寂しい」華奈
「私も、光君と住んじゃおうかなあ・・・」
春奈は楓に言われたことを、考え始めている。
「そうだねえ・・・」
華奈も考え始めた。
「これから光君ね、いろんな所からお誘いがある、特に音楽関係からかな」春奈
「うん・・・」華奈
「光君と音楽したいのは晃子さんだけじゃない、いろんな人が注目している」春奈
「そうだね、客席の後ろから聞こえて来た」華奈
「光君、音楽の練習なら断らないし・・・」春奈
「うん、晃子さんのマンションにもホイホイついて行ったし・・・」華奈
「まあ・・・そのホイホイがあったから、あの鍵とか、あの会長や集団を潰せたんだから・・・」春奈
「阿修羅・・・もしかしてわかっていたのかな・・・それで・・・行ったのかな」
華奈の声が震えた。
「うん・・・この学校に今年から私と華奈ちゃんが来たこととか。ボクシング部はともかく、柔道部と音楽部のこととか・・・」
春奈の声も震えた。
「そうでないと・・・ありえない・・・春奈さん・・・」華奈
「うん・・・コンサートの日とあの集団との大乱闘も」春奈
「うん・・・それも阿修羅の思惑かな・・・」華奈
「ただ、光君、体力全くないから、それを支えるために私とか、圭子さん、楓ちゃん・・・華奈ちゃんをつけて・・・か・・・」春奈
「うん、そうでないと・・・光さん・・・コンサートで指揮なんかできる体力があるわけない」華奈
「光君のことを何とか支える人が必要だった」春奈
「私たちも・・・ずっと阿修羅に導かれて・・・」華奈
「うん、阿修羅の思惑にほぼ沿って・・・」
春奈の声は真剣になった。
「お願い・・・光さんと一緒に住んで」
華奈ははっきり言い切ってしまう。




