第128話何らフォローをされない華奈
光は帰りのワンボックス車に乗り込むなり、眠ってしまった。
車には華奈、春奈、楓、圭子が一緒に乗った。
運転手は更なる警備ということで、刑事が受け持った。
「ねえ・・・どうして、こんなに簡単に眠ることが出来るの?」華奈
「本当だよ、多少は聴きに来てくれてありがとうとか、ちゃんと言わなければだめだよ」楓
「まあ、もともと、全く体力が無い子だから、あんなに人前で動いたんだから」
春奈の言葉は正解である。しかしフォローにはなっていない。
「まあ、確かにそうだよね、子供の頃からラジオ体操で疲れたって言うぐらいだし」
圭子も全くフォローの意思はないようである。
これには、運転する刑事も笑いをこらえきれない。
「ところでさ、華奈ちゃん、知っている?」
春奈が意味ありげな顔で華奈を見た。
「え?」
華奈は春奈の質問が全く予想できない。
「一体・・・何?」
華奈は、少し不安になる。
幼い頃から春奈のことは知っている。
そして、春奈の「意味ありげな顔」は、たいてい華奈にとって不安をもたらす結果になった。
「うん、祥子先生から聞いたんだけど」春奈
「うん・・・」華奈
「晃子さんは、もうあのマンションに住まないし」
「あの企業とも関係をやめるんだって」春奈
「うん、そうだよね」
確かにあんなことをされれば、誰だってそうなるだろう、華奈は自分の不安が「勘ぐりすぎ」だと安心した。
しかし、その安心は甘かった。
「あのね、華奈ちゃん」
春奈の話はまだ先があるようだ。
それでも安心してしまった華奈は、笑顔のまま。
「あの晃子さんね、光君の家のすぐ近くにマンション借りたんだって」春奈
華奈の表情が一変した。
口を一文字に結んだ。そして怒っている。
「まあまあ、そんな怒らないで・・・」
春奈は怒る華奈に追い打ちをかける。
「光君にも、そのことを言ったらしいよ」
「光君も喜んでいたってさ」
春奈の言葉で華奈の顔が真っ赤になった。
「もう!このアホ!」
華奈は光の腕を思いっきりつねりあげた。
「いてっ・・・」
光の口から言葉が漏れた。
しかしいつもと同じ、弱々しい声。
そしてまた、寝息をたてて眠り込んでしまう。
華奈としては「思いっきり」つねったはずなのに。
「はぁ・・・」
華奈がため息をついた。
「まあまあ・・・楽しみだねえ、光君」
「これから、音楽の練習もタップリできるね」
「それも、あんな美人と」
圭子は嬉しそうな顔をする。
圭子も華奈の心中など全く考えていない。
「うん、私も時々東京に出て光君と晃子さんの練習とか本番聴きに来るかな」
「光君、音楽だけならかっこいいし、晃子さん美人だし」
楓も同じく華奈に対するフォローは全くない。




