第126話マンションの強制捜査
黒ヘルメットの集団全員が手錠をかけられている。
また、その集団の前に高級スーツを来た男が一人手錠をかけられている。
「これは・・・」
あまりの異様な情景に首相は公安警察のトップの顔を見た。
「あれをごらんになってください」
公安警察のトップは、首相の問いには応ぜず、数百人の集団から少し離れたところを指さした。
「一体・・・」
首相の声が震えた。
首相の目には、夥しいほどのライフル、刀が見える。
それが小山のように積み上げられているのである。
「首相・・・ご迷惑をおかけいたします」
驚いて声が出ない首相に官房長官が声をかけてきた。
「うん・・・一体・・・これは・・・」
首相は、ようやく官房長官の声に応じた。
「はい・・・かねてから内偵をおこなっておりました例の化粧品会社の会長と、その私兵とも言える集団です」官房長官
「・・・そういえば見覚えがある」
首相はうなだれて座り込む会長を見た。
最近は多額な政治献金を行い、特に野党系の国会内の質問や国会外の活動に対して強い影響力を持っていることを知っている。
しかし、その多額の政治献金は何故か、表に出ることはない。
公安も懸命に調査をしているが、巧妙に隠蔽されていて発覚にまでは至っていない。
「私から説明をしましょう」
首相の前に坂口が進み出た。
若い頃からの旧知、肝胆相照らす仲である。
「うん・・・」
首相は坂口の顔を見た。
首相にとっては、とにかく信頼できる男だ。
「渋谷の音楽ホールで高校生のコンサートが行われていました」
「この会長と、その私兵とも言える集団が、そのコンサートに襲撃をかけました」
「目的は、そのコンサートに出演するヴァイオリニストの部屋・・・部屋といっても、会長の企業お抱えの部屋なのですが」
「そこの部屋のピアノの中に鍵が隠してありました」
「そしてその鍵は、ピアノの下にある保管場所を開けるためのもの」
「その鍵をコンサートの三日前に、ヴァイオリニストと一緒に練習をしていた高校生の指揮者が発見しました」
「何でもピアノの音に異音を感じたとかで」
坂口はここまで話して一旦首相の顔を見た。
首相が何か聞きたそうであったからである。
「・・・そのピアノの中にあった鍵が何か問題があるのか」
「そんな集団まで使って取り返すものなのか」
首相は首を傾げるけれど、既に官房長官、法務大臣、警視総監、公安警察のトップも集められている状況である。
それに坂口が、嘘偽りをいう男ではないことは首相自身がよくわかっている。
「ここからは・・・私が・・・」
公安警察のトップが首相の前に進み出た。
「ここの企業、いや会長とその私兵の活動については、かねてから慎重に内偵を行っておりました」
「しかし、会長もその私兵集団もなかなか決定的な証拠を見せません」
「それでも、裏の情報筋から会長が最近、大量破壊兵器を手に入れたことを知りました」
「私たち公安もあちこち、懸命に調査をしたのですが、なかなか所在がわかりませんでした」
「そうして探している時、しきりに会長が鍵を探しているらしいとの情報を坂口様からいただきました」
「あの会長がそこまで探す鍵には何か理由があると判断しました」
「しかも、かなり多くの街宣車が渋谷のホールまで向かっているとの情報もはいりました」
「即座に機動隊や警察に対応を指示するとともに、会長がコンサートホールに向かった直後からマンションの部屋の強制捜査を行いました」
「確かに情報通り、大量破壊兵器をはじめ、夥しい金塊、宝石を発見しました。
またUSBがあり、国内の武器弾薬の隠し場所、私兵の住所、職業リストと、政界への献金リスト他大量のリスク資料を発見しました」
ここまで話して、公安警察のトップは後ろを振り向いた。
誰かを手招きしている。
「何?」
会長の顔色が変わった。
まるで信じられないといった顔になっている。




