第120話阿修羅の出現
ホールでは全ての演奏が終わった。
肩で息をする光に数多くの花束が渡される。
「もお・・・花束多すぎ・・・」楓
「あ・・・由香利さんだ、うん、綺麗な人ねえ・・・ああ、クラスの由紀さんとか他の女の子も降りて来た」春奈
「まあ、光君真っ赤になっている」圭子
「ほら、後ろで華奈ちゃん、怒っている」楓
「そんなこと言ってもねえ・・・由香利さん美人だもの」春奈
「それにしても、愛想が不足だなあ、ステージの上なんだからもう少し」圭子
「花束なんて重いものじゃないのに、よろけるし」楓
「いや、今の彼には何でも重い」春奈
「今でなくても、いつでも重い」
圭子の指摘は厳しい。
花束は光だけではなくヴァイオリニストの晃子や様々な音楽部員にも渡される。
何しろ本当に膨大な花束の量であった。
花束の贈呈も終わり、校長先生の最後の挨拶が始まった。
光は校長の隣に立っている。
「さて・・・」
圭子が楓に目くばせをした。
「鈴が鳴り始めた、地蔵様の合図」
圭子は低い声になった。
「うん、そろそろね」楓
「華奈ちゃんも」春奈
華奈も客席の最前列に座る三人を見ている。
まず客席最前列に座る圭子、楓、春奈が手をつないだ。
そして華奈が頷いた。
圭子が何か祝詞のような言葉をさらに低くつぶやいた。
突然、眩いばかりの閃光に包まれた。
圭子は客席と舞台を見渡した。
「うん・・・完璧」春奈
「さすが・・・」楓
「全員が固まっているね」春奈
華奈が舞台を降りて来た。
「時間を止めちゃったんだ」華奈
「うん、ここのホールだけね・・・外はとんでもないことに・・・」圭子
「うん、本当にすごい、ずっと見ていた」華奈
「今は地蔵菩薩様が抑えている」春奈
「さあ・・・出番かな・・・」
華奈は光を見た。
光も頷いた。
「さあ、光君・・・いや阿修羅様、出番です」
圭子が声をかけた。
その言葉で光の身体が輝いた。
光の身体全体は、光輪に包まれ、阿修羅の身体に完全に変化した。
圭子、楓、春奈、華奈は、あまりの眩しさに目を閉じてしまう。
そしてようやく目を開けた時には光、いや阿修羅の姿は見えない。
聴衆及び舞台の上の校長や音楽部員は固まったままになっている。




