第118話不安を感じた坂口と柔道部顧問の前に・・・
コンサートホールが最高の盛り上がりを見せる中、ステージ裏に待機していた坂口と柔道部顧問山下は言いようのない不安を感じた。
坂口は、コンサートの三日前、校長からマンションの晃子の部屋の監視カメラの件を聞いた時点で危険を感じ、即座に馴染みの警察幹部に「刑事のタクシー運転」を電話で頼んだ。
坂口としても光や苦労して育て上げた柔道部員たちが心配になった。
そして、その足で自ら秘密裡に馴染みの警察幹部に出向き、相談を行った。
その警察幹部も、坂口からの「相談」に驚いた。
坂口は警察に対する柔道の指導だけではない。
政府より秘密裡に公安関係の仕事も委託されている。
つまり主に国家の体制を脅かすようなテロリスト等の情報の提供をしている。
「いや・・・坂口さんも、あの会長のことを掴んでいたのですか・・・」
「本当にあの会長は、当局としても、以前から不穏な動きがあったので注目をしておりました」
「ただ以前は、いわゆる裏社会や企業同士の中の小競り合いだけで」
「まあ、それにしても決定的な証拠が無いので検挙には至らなかったのですが」
「それにしても、最近はますます危険な武器弾薬を購入しているらしい」
「そしてその保管場所が全くわからない」
「様々なアジトに調査員を送って調べるのですが・・・」
「なかなか見つからない、大きな捜査まで踏み込めない」
坂口は、驚きの顔を隠さない警察幹部に、もう一つの事実を伝えた。
「コンサートで指揮をする高校生の男の子が・・・」
「晃子さんの部屋のピアノの中にあった鍵を持っています」
「普通はありえない場所に鍵があったとか・・・」
「もしかすると会長が必死になって鍵を探すのかも・・・」
その言葉で、警察幹部の表情は一変した。
坂口の勘が異様に鋭いことは、警察幹部も熟知している。
しかし、ただ、驚いているだけではない。
深刻な顔になった。
「・・・恐ろしい情報です」
「その鍵で開けられる場所にとんでもないブツがあるかもしれない」
「坂口さん、絶対あの会長は鍵を探しに会場に現れます」
「そして何をするかわかりません」
「絶対、その高校生の指揮者に近づけないでください」
「もちろん、動くのは会長だけではありません」
「会長の極秘集団も動きます」
「それ故、出来る限りの機動隊や警察に動員をかけます」
「それから、その高校生にも刑事をそのまま護衛につけます」
「タクシー運転だけでは危険です」
警察幹部の顔が緊張していた。
今の坂口と柔道部顧問山下の心配は、舞台袖口の前の扉の警護を指示した柔道部員たちの様子にある。
「もしや・・・何か・・・」
ただ会長の姿を見てはいない。
客席にも舞台裏や楽屋にも姿が見えない。
坂口も会長の戦闘能力については、警察当局から聞き、かなり警戒をしている。
「しかし、あれ程の柔道選手たちだ」
「いかに、会長が戦闘に優れていても、そう簡単には警護を破られることもないだろう」
「・・・それでも気になる」
坂口と柔道部顧問山下は、ステージ裏から舞台袖口の扉に急いだ。
不安を感じながら袖口の扉を開けた。
「むぅ・・・」
「これは・・・」
坂口と柔道部顧問山下の前に柔道部員たちが横たわっている。




