第114話地蔵菩薩vs極秘集団(2)
ますます極秘集団は驚きを隠せない。
何しろ目の前に僧侶の姿をした男が突然現れ、鈴を鳴らした。
それもけたたましいほどの大音量の鈴の音。
どうやってこの大争乱の中、ここに立つことが出来たのか。
戦闘のプロとしては、全くあり得ないし、理由がわからない。
しかも、頭を剃り、袈裟を着て錫杖を持っている。
そして、その頭の後ろは、まるで太陽のように光り輝いている。
「落ち着け・・・」
「まやかしだ」
「極秘」集団のトップはそれでも、落ち着きを取り戻した。
「この先を通すも通さないもな・・・」
その僧侶に向かって酷薄な笑を浮かべた。
そしてライフルを構えた。
「お前は馬鹿か」
「俺は坊主を殺すなんて、何も罪があるなどとは思っていない」
「何が罪のない人だ」
「何が幸せなコンサートだ」
「御仏の御罰?」
「馬鹿も休み休み言え」
「この国でな、俺たち以上に戦闘が強い集団はないぞ」
「その俺たちが命を落としてもいいと闘っているんだ」
「おい!そこの馬鹿坊主!」
「早いところ、この俺に土下座でもして、命乞いをしろ」
「極秘」集団のトップは引き金に指をかけた。
地蔵菩薩の後ろにいる刑事の顔が真っ青になる。
そして「極秘」集団全員がライフルを地蔵菩薩に向けて構えた。
「うん・・・」
地蔵菩薩は何故か微笑んだ。
「それなら、その武器とやらを使ってごらんなさい」
「どうなることか、わかるでしょう」
まだ、柔らかく優しい声である。
「この馬鹿坊主!」
「殺してしまえ、邪魔だ!」
「打て!」
「極秘」集団のトップは、大音声で号令をかけた。
途端に凄まじいほどの銃撃が始まった。
刑事は、思わず頭を抱えて座り込んだ。
「何?」
「どうして?」
刑事は目を疑った。
確かに銃撃の音は凄まじい。
しかし、刑事の付近に一発として着弾することがない。
「ありえない・・・」
どう考えてもライフルの射程距離にいる。
それなのに、弾が届かない。
「あれは・・・」
刑事に不思議なものが見えた。
「光の壁だ」
刑事は、地蔵菩薩の前に光る透明な壁があることに気づいた。
そしてライフルの弾が、全てそこで止まっている。
また手榴弾を投げつける者もいる。
しかし、その手榴弾も全て、その透明の壁で止まっている。
爆発も何もない。
「極秘」集団の中には刀で地蔵菩薩に切りかかる者も見える。
しかしライフルや手榴弾と同じことである。
全て光の壁に刀が食い込み、その壁から抜くことが出来ないでいる。




