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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
112/419

第112話会長vs柔道部 そして異変

ブラームス第二交響曲は、第四楽章に入った。

光の指揮は一層より流麗さと華やかさを増し、歓喜に満ちたフィナーレへと音楽部員を導いていく。

そして聴衆の表情はフィナーレへの期待感から、輝きを増している。


「ほう・・・すごいフィナーレになりそうですね」

「高校生のオーケストラでここまでブラームスを盛り上げるなんて、若いと言うことは素晴らしいことだ」

ついに野村と会長は、袖口の扉の前に立った。

柔道部の巨漢斎藤を含め国体上位選手が六人立っている。


「あの、誠に申し訳ありませんが、ヴァイオリニストの晃子さんにお逢いしたいので」

「そこの扉を是非・・・」

会長はここでも、丁寧な言葉づかいをする。

頭まで深く下げている。


「いや・・・ここの扉は警備上、演奏が全て終わるまで開けないよう、音楽部顧問より指示がされております」

「もう少しで演奏が終わりますので、今しばらくお待ちください」

柔道部斎藤は、指示通り丁重に拒絶する。


しかし、会長は笑顔のまま引き下がらない。

「いや、どうしても急ぎなので是非お願いできませんか」


「そう言われましても、私どもも、音楽部の顧問の指示を違えるわけにはいかないのです」

柔道部斎藤も必死である。


「うーん・・・困ったなあ・・・」

「こんなに融通がきかないなんて・・・」

「これほど、この私が頭を下げて丁寧にお辞儀をしているのに」

少しずつ会長の顔が赤くなってきた。

その顔を見て、柔道部員も異変を察知した。

会長は厳しい顔に変化、そして、スーツの内ポケットに右手を差し入れる。

そしてスーツの内ポケットから右手を引き出す際に、スタンガンの一部が目に見えた。


「固めろ!」

柔道部斎藤が叫んだ。

野村を含めて七人の柔道部員が会長身体に飛びついた。

そして会長を中心にして巻き付くように、会長の身体をガッチリと固める。


「ふん、こんなことも知らないのか」

身体を固められた会長は、何故かせせら笑った。

そして次の瞬間


「バチバチバチッ」という音と同時に小さな稲妻のような光。

途端に会長を固めていた柔道部員は全員床に倒れている。


「たわいもない・・・」

会長はよだれを垂らして倒れている柔道部員を、再びせせら笑う。

「これがスポーツと戦場との違い」

会長は、スタンガンを手に持っている。


「さて・・・」

ブラームス第二交響曲もフィナーレ寸前になった。

「ああ、いい演奏だなあ」

会長はうっとりとした顔になる。


「まあ、それはともかく・・・」

会長は袖口の扉に手をかけた。

「まあ、このステージの裏にも、何か面白い奴がいるんだろうが・・・」

「楽しみだなあ」

「それらを転がしてから、鍵を取り返して、晃子、それから光とかいうガキを捕まえ、後で・・・」

会長は首を切る仕草をする。

そしてその表情が本当に楽しそうである。


「まあ、ここでブツブツ言っていても進まないな」

会長は舞台袖口のドアノブを回そうと力をこめた。


「ん・・・」

「あれ・・・」

「おかしい」

会長の顔色が変わった。


「動かない・・・」

「ドアノブは回る、舞台裏も少し見える・・・」

「しかし・・・脚が・・・」

会長は舞台袖口のドアに手をかけたまま、硬直している。

次第に手も動かなくなっている。


「どういうことだ・・・」

会長は意識だけはある。

しかし、全く袖口の扉の前で身動きが出来ない。

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