第110話極秘集団の完全勝利か・・・しかし・・・
「極秘集団」とホールを護る警察と機動隊の攻防当初は熾烈を極めた。
鳴り響くライフル音、刀のぶつかり合う音が広場全体に響き渡る。
警察と機動隊もライフルやガス銃、催涙弾、放水器などを使い「極秘」集団の鎮圧を試みるが、さすが相手は元自衛隊の集団、しっかりとした防護服を着ており、なかなか倒れるものがいない。
それどころか、極秘集団の武器や攻撃力が警察と機動隊を圧倒し始めた。
ホールのエントランスを護る警察と機動隊員が、少しずつ倒れ始めている。
「まずい・・・」
機動隊のトップも刑事も、真っ青な顔になってきた。
どう動いても、相手のほうが戦闘力は上。
さすがに、自衛隊で長年戦闘技術を磨いて来ただけはある。
ほぼ五分で警察と機動隊の半分以上が倒れている。
しかし、「極秘集団」は、ほんの二、三人程度。
「戦闘員」の数においても、圧倒的な不利の状況に陥ってしまった。
十分が経過した。
「ふん!全員戦闘止め!」
「極秘」集団のトップが突然、大声で指示を出した。
これも広場全体に響き渡るような大声。
そして広場に立っているのは、ほとんど「極秘」集団だけになった。
数百人もいた機動隊や警察官は、全てが倒れ伏している。
そして、「極秘」集団のトップがライフルを構えた。
ホールエントランスの前に立つ機動隊のトップと刑事にライフルを向けている。
そして低いけれど、よく通る声で
「おい!」
「まだまだ、武器弾薬もある、今集まった仲間もほんの一部だ」
「これからもどんどん集まって来る」
「俺たちの集団を甘く見たのが失敗だったな」
それは、それなりに冷たい恐怖となる。
「取りあえずお前たちが殺されたくなかったら、その前を開けろ」
「まあ、抵抗したければ抵抗してもいい」
「結果はお前たちもわかるだろう」
「俺たちは命を無くすことは、何もためらいがない」
「それが自分の命であっても、他人の命であっても」
「極秘」集団のトップはここで一息をついた。
「ああ、それから無駄に動けば、お前たちの命だけではない」
「ホールにいる全員も抹殺する」
その言葉で、「極秘」集団全員がライフルを構えた。
「むぅ・・・」
刑事は何と言う狂気の集団かと思う。
刑事は、「極秘」集団と会長の関係を以前から捜査してきた。
確かに危険な集団とはわかるけれど、決定的な証拠を何も残さない。
その決定的な証拠がないので、立件できなかった。
それでも、闇社会の中での「企業活動」の妨害相手、つまりその企業に何等かの形でのリベート要求を行った相手に対する報復であり、何ら関係のない一般人を攻撃するなどのことはなかった。
それに闇社会の妨害原因も大したものではない。
そこの土地の化粧品売上の数パーセントのリベートとか、会長や企業幹部の主に女性関係のスキャンダルもみ消しの金銭要求であった。
いわゆる「悪者同士」の小競り合いと見ていたのである。
ただ、その小競り合いに勝つのは常に「極秘」集団であった。
そして「闇社会」に圧倒的な力を持つようになった「会長」と「極秘」集団は、次第に地方から始まり、今は国レベルの政界に工作を始めている。
「こうなると・・・」
刑事は蒼くなった。
今、ここにいる極秘集団は、やがては大規模な機動隊に鎮圧されるだろう。
しかし、どう動いてもホールの観客は無事では済まされない。
しかし、まだ集まって来る集団もあると言っている。
確かに、「極秘」集団は他にも日本各地にいる。
その集団が各地で活動をはじめれば、日本国内が大争乱になってしまう。
「ここで、今、本当に会長とこいつら止めなければ、この国が・・・」
刑事の顔は蒼さを増すけれど、何ら策がない。
そして極秘集団のライフルはホールエントランスに立ち尽くす機動隊長と刑事に向けられ、まさに絶体絶命のピンチに立たされている。
「あれっ・・・」
蒼さを増した刑事の耳に、何故か鈴の音が聞こえて来た。
「チリン」
「チリン」「チリン」
「チリン」「チリン」「チリン」・・・
鈴の音が次第に大きくなった。
機動隊のトップや極秘集団も鈴の音に気が付いたのか、しきりに周囲を見回している。




