第104話晃子の誘惑第二弾
コンサートプログラムの一曲目、魔笛序曲が始まった。
光は最初の出だしを、いつもより多少ゆっくり目のテンポで始めた。
しかし、そのゆっくりさが、少し緊張気味の音楽部員の落ち着きを取り戻した。
「うん・・・いい・・・」
「テンポもいいし、アンサンブルを上手に合わしている」
「リズムとかフレーズのタメがいいなあ」
「聞きやすいし、変な技巧がない」
「光君の指揮に合わせている学生たちの顔が・・・」
「なんか輝いている」
「モーツァルトって、こんなに面白かったっけ・・・」
「魔笛序曲なんてどうでもいいって思っていたけれど、華やかだなあ」
音大の学生や教授たち、プロ音楽家たちは光の音楽に、一曲目で惹きつけられてしまった。
他の聴衆も全く同じ、陶然とした顔で魔笛を聴いている。
魔笛序曲が華やかに終わった。
光は指揮台を降り、お辞儀をする。
ホールからは万雷の拍手を受けている。
「わっ・・・すごい拍手・・・」楓
「指揮棒の振り方といい、動きといい、なんか綺麗だった」春奈
「私も聞き惚れちゃった、あの子のお母さんの影響かなあ、いい音楽だよ」
「お母さんに聞かせたかったなあ」
圭子は既に涙ぐんでいる。
楓は後ろの客席を見た。
「もう、すごいよ!みんな盛り上がっている、こんなクラシックのコンサートで」
確かにロックコンサートではなく、クラシックのコンサートで、これほど盛り上がるなど、考えられない。
春奈も後ろの客席を見た。
「そうね、あの女の子たちもね」
春奈の言葉で楓は驚く。
「え?」
楓も後ろの座席の女子学生の一団を見た。
「わっ・・・」
春奈の言う通り、女子学生の一団が、本当に熱い目で光を見ているのである。
コンサートプログラムの二曲目になった。
「では、よろしくお願いします」
光は、晃子に声をかけた。
晃子は真紅の胸あきのロングドレスを着ている。
もともとスタイルはいい。
特に華奈にとって、嫉妬の対象となっている「胸の谷間」が強調されたドレスを着ている。
晃子としては、光の「連れ込み誘惑」には、失敗した。
そのため、今日のコンサートはもしかすると「最後のチャンス」になるかもしれない。
仮にコンサートの後、光と練習をするようになったとしても、今日ほどの「誘惑ドレス」はなかなか着ることが出来ない。
晃子としては、光に対しての「決定的な勝負ドレス」を選んでいる。
「いえいえ、こちらこそ、よろしく」
晃子は、珍しく深くお辞儀をした。
目的は、深いお辞儀で「自慢の胸の谷間」を見せつけるため。
「ここまでやれば・・・」
晃子は少し長めに「胸の谷間」を見せつけた。
そしてゆっくり身体を戻した。
すると、光がゆっくりと近づいて来た。
「やった!作戦成功だ!」
晃子の心臓はバクバクと鳴っている。
光が耳元に口を寄せてきた。
晃子はメマイを感じるぐらいドキドキしている。




