第100話コンサート当日の朝
ついに音楽部のコンサート当日となった。
しかし光はなかなか部屋を出てこない。
シビレを切らした楓が光の部屋を開ける。
「もぉーーーっ!」
「何でまだ寝ているの!」
「今日は本番だよ!」
「まったくたるみ過ぎ!」
開けた途端に楓の大声になった。
その大声を聞き華奈も駆けつけた。
「あーーーっ」
「もう、どうして、こういい加減なの!」
「はやく着替えてください!」
華奈も光の寝ぼけ顔にあきれてしまう。
「そう言ったって、眠いし」
光はなかなか動かない。
いや光本人は動いているつもりらしい。
しかし、楓と華奈には、まるで「芋虫とか亀がはいずっている」としか思えない。
「もう、限界!この芋虫!亀!」
楓は光の腕を取った。
そのままベッドから引きずりおろしてしまう。
光はそのまま、フローリングの床に落ち、頭をゴツンとぶつけている。
しかし、動きは、「芋虫か亀」のまま。
「うん、わかりました!」
「着替えさせます」
華奈は光のパジャマを脱がしにかかる。
「え?」
光はキョトンとして目覚め、身体をようやく起こす。
「楓ちゃんと華奈ちゃん、どうしてこの部屋にいるの?」
しかも、信じられないことまで言っている。
「もーありえない、この人!大アホ!」楓
「全く世話が焼ける!さっさと立って!」華奈
「この人やめたら?」楓
「いや、それはありません、私でないと、務まりません」華奈
いろんなことを言って光を着替えさせようとする。
「あの・・・自分で着替えるから」
確かに光も恥ずかしい。
同い年の従妹と年下の女の子に着替えさせられるなんて、恥ずかしいことこの上ない。
それに、高校二年生にもなって、着替え一つできないとなると、この楓と華奈のことだ。
将来いつまでも言われるのか、はかりしれない。
光は、必死に楓と華奈を部屋の外に「押し出して」、なんとか着替えを終え、朝ごはんの席に着いた。
「全く・・・」楓
「そのまま手伝わせればいいのに」華奈
「結局、ちゃんと出来ない」楓
「ほんと・・・恥ずかしい」華奈
「髪の毛ボサボサ」楓
「まだ気が付いていないし」華奈
光としては、ちゃんと着替えを終えて、朝食の席についたと考えている。
どうして、また目の前で、ゴチャゴチャ言われるのか、わからない。
ただ、髪の毛は「時間が無くて」まだ整えていないことは認めるけれど、何故か叔母さんが笑っている。
「あの・・・何か変ですか?」
楓と華奈には聞きづらかった。
何等かの不備があるらしいけれど、楓と華奈に聞いたら、どれほど責められるかわからない。
だから、そっと圭子叔母さんに聞こうと思った。
「うん・・・光君、あのね・・・」
圭子叔母さんは笑いをこらえきれないようだ。
黙って手鏡を光に渡した。
光も首をかしげながら、手鏡を見る・・・と・・・
「あ・・・」
さすがに光の顔が赤くなった。
ワイシャツのボタンが、一つではない。
二つずつずれている。




