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一編

●目の前に犬●


犬がいた


大きくも小さくもない犬がいた

俺の居る家の前の家の玄関にいた


いた


その犬がまだ小さなときは

たくさんの人がそれに触れようとしていたが


最近の犬はというと

散歩途中に通り過ぎていく犬と数秒戯れる程度だ


昔は私もこの犬で遊んでいた

パンを投げつけると口でキャッチし

私が撫でようとすると

途端に地べたに寝転んで仰向けになるから

私は何時この犬を調教したのかと

少し戸惑ったりした

「おて」も何故かできた

不思議なこともあるものだ


だがいつしか飽きてしまった私は

その犬の目の前を通っても触れようとはしなくなった

私が目の前を通り過ぎる間

犬はずっとしっぽを振り続けていた


いつでも いつでも いつでも


やがて私が中学生になるころには

私は自転車に乗り始め

犬の寝ている目の前を通り過ぎるだけになった

たまに気が向いて触りはしたが

すぐに飽きて家に入った

犬のしっぽも振りが遅くなった


高校生になっても

基本的にはなにも変わらなかった

いや 歩いて通り過ぎることがあっても

犬がしっぽを振ることは無くなったな


ただ

最近 歩いてその場を通り過ぎようとしたら

犬が珍しく興奮していて

しっぽをブンブンと振りながら

私をずっと見ていることがあった


私はその日 訳も無くイライラしていたので

その様を見て更にイライラした

しかし 暴力は使いたくなかったから

犬の頭をガシガシと撫でることで

ガマンした


自分が住む家の窓から犬を見ていたら

犬もずっとこっちを見ていた



その数日後

犬は死んだらしい

死んだ理由もその死体の姿も知らないから

断言はできないが


  死んだから


そこにいた犬は

そこには居なくなった


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