サナギのように
一編
●サナギのように●
時を待ちゆく者
散りゆく前に 目を覚ませ
太い茎の横に繭<まゆ>を作り
長い眠りの旅に出る
光に包まれる繭のなかでは
暗闇がワタシを包み込む
何もかもが無いこの部屋で
かすかな光すらも許さずに
いつかその光を掴むと決めて
カラダを丸め込んで目を閉じた
忘れることなかれ
ワタシはここにいる
世界で散りゆく命のなかで
ワタシはいつか目を覚ます
時を待ちゆく者
散りゆく前に 目を覚ませ
白い部屋のなかで眠るキミ
壊さずにそのなかで果ててゆけ
やわらかな芝居などは忘れ
壊しそびれたそのカラダを
はじけるように喰いちぎれ
命を残す意味を忘れたこの世界
赤子すらも容赦なく口にする
いつか壊すと決めた繭の横に
世界に心を許さずに
舞い落ちていく このカラダ
忘れることなかれ
ワタシはここにいた
世界に残りゆく命のなかで
ワタシは永久<とわ>の
眠りにつく
時を待ちゆく者
散りゆく前に 目を覚ませ
かすかな吐息も許されぬ
硬く縛られた このカラダ
守るための部屋でなく
縛るためにあるのがこの部屋で
だけど
縛られることで守られている
だから出られない だから縛られる
行き場所の無い 白き部屋のなかで
いつか出ることを夢に見ながら
今日もいつもと同じように
眠っていくのだ この
行き場所の無い 白き部屋のなかで
忘れることなかれ
ワタシはここにいる
世界で舞いゆく蝶のなかで
ワタシはいつか目を覚ます
それでも
願った姿にはなれはしない
縛るものが違うから
願うならば そう
あのなかへ