雨雲ウォール
●雨雲●
ほら御覧なさい
あまりにもみんなが雲さんを使わないから
雲さん真っ黒に汚れちゃったじゃない
みんなが上を向いて歩いている
あーホントだーっと微かに
喉仏が揺れている
先生は何人かの喉仏を突いた
指先でアチョー! と言いながら
すると別の何人かが泣き出した
先生はその何人かは突いていない
先生は言った
お前らが泣くなよと
すると雨雲さんが
先生の頭の上に落ちてきた
「うわあ、雨雲さんナニヲ!」
子供はエラい
なぜならば背後に
親という名のゴッドファーザーがいるからだ
雨雲さんに憑かれてから
すっかり先生は
アフロになってしまった
「どいて雨雲さん……いや雨雲校長!」
それもただの灰色アフロではない
辺りに雨を撒き散らすアフロだ
気持ち悪いああ気持ち悪い!
そうだ
私は気持ち悪い!
見た目が油取ったあとの紙みたいな
使い古されましたみたいな
そんな感じだから気持ち悪い!
あと
触ってもジメリジメリで気持ち悪い!
もお全体的にダメ!
終わってる!
なんか悲しくなってきた
泣きたいうわーん
うわーんうわーんうわんうわんうわーん
雨雲は泣き出した
先生の頭の上で泣き出した
雨雲は全方位から灰色の水を出した
雨に包まれて先生の姿が見えない
ああなんてこったい
まるで雨ワラシのようだ
子供たちはそれを見て、静かに笑っている
手に持っていたカバンから
大きな大きな傘を取り出して
こちらを向いて
静かに静かに笑っている
先生は涙の向こうの子供たちを見る
そして思う……
この涙、邪魔。