ピアノ
三編
●冷たい手●
冷たい手
『死』よりも冷たい
冷たい手
秋風に散りゆく
指先の冷たいも
手の甲の冷たいも
カイロかなにかでは
まだ冷たい
人肌でも冷たい
『死』よりも冷たい
放ることが一番冷たい
早く春よ
●雪山●
雪が降った山
雪が降った山
雪の山には違いない
でも別に雪がもともとあった訳じゃない
雪が空から降ってきて積もっただけ
人はあの山を雪山という
まあ私もそうゆうことにしたよ
●ピアノ●
雪山の中にピアノがあった
脚にツタとかが巻き付いていた
黒の肌にキズを付けている
そのピアノは
渇いた風を見つめていた
冷たい手
私の手
息を吐いて温める
冷たいピアノ
私の吐息
黒のメッキが少し曇る
木に積もった雪が落ちる
雪が手のひらの中に吸い込まれていく
椅子に座れば軋むだけ
椅子に座れば尻が冷えるだけ
意識がもうろうとしている
意識が朦朧としている
廃墟だ
此処は廃墟だ
何かが在った雰囲気がある
意識がもうろうとしている
ああああああああああああああ
詩を
うたいたい
ピアノを奏で
声を奏でる
○ツバサ○
あああああああ
あなたの笑顔が恋しいの
あああああああ
あなたの声が恋しいの
あああああああ
あなたの視線が恋しいの
あああああああ
でも会えない
あああああああ
でも逢えない
あああああああ
あなたの肌が冷えきっている
あああああああ
私の指が冷えきっている
あああああああ
詩を奏でる涙
あああああああ
ああああああああああああああ
○○
そして詩人は鍵盤に
顔を沈める
冷たい鍵盤
冷たい詩人