吐息
四編
●吐息●
甘みに満ちた視線と
指が淫らに音を上げる
白く濁った
吐息が少しだけ舞っては消えていく
空が霞んでいる
ひりひりと指が温まる
まだ生きている気がする
私とアイツの声が木霊する
●アワビ●
うごめきながら呼吸する
困惑しながら呼吸する
異物を入れながら呼吸する
ナニかをされて倒れていく
意識が薄れて声が薄れて
口から吐息が漏れている
殻がギチギチと音をたてる
ヒビが入るかもしれない
身が切り刻まれて口に頬張られる
殻は捨てられるだけだ
ポイってね
●ゴミ箱行き●
見上げれば空が青くすんでいるだろうが
私としてはどうでもいいわけで
とりあえずこの濁ったベッドから降りたいと思う
ゴツゴツとしてたり
グニョグニョとしてたり
たいして寝心地なんて良くないんだ
誰か助けてくれ
もう手遅れかもしれない
●アメ●
アメをしゃぶる音が聞こえる
もっと静かに食えんのか
唾液絡まって汚い音しか出せんのか
ガムを食ってるような音だ
もしかしたらガムを食ってるのかもしれない
粘り気が徐々に薄れて
滑りが良くなるのだ
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ
他人が奏でると不快なだけだ
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ
別に飲み込もうが棄てようが
どちらでもいいから
さっさとこの舌が飽きてくれればいい
早く味わいを無くしてくれればいい