天泣
二編
●少し雨●
少しだけ雨が降っていた
そしてすぐやんだ
またいつ降ってくるのか分からなくて
不安なまま上を向いて歩く
雨は降るなら降るで降り続けて欲しい
中途半端はキライな方だ
雨が降ってきた
肩が少し濡れてしまった
今も少し濡れている
肩を叩けば水玉が少し落ちてくる
制服が水をはじいてくれたからだ
あと色々なモノが汗をかいては流していた
冷たい床屋の看板に
冷たい汗がだくだくと流れている
雨が地面をびしょ濡れにして苛めていた
その雨を長靴が踏んで苛めていた
その長靴を子供が踏んで苛めていた
子供は長靴を履いていた
長靴が長靴を踏んでいた
あの長靴は誰のモノなんだ
答えはいくら探しても見つかりはしない
あの日から何年も経った今でも
見つかりはしない
あの場所は
あのときだけの場所だから
見つかりはしない
●短いどしゃぶり●
あなたがもうどこかへ行ってしまう
あなたがもうどこかへ行ってしまう
雨を弾きながら
水玉を吐き出しながら
長靴はパカパカと走っている
馬の足音にも聞こえるのに
随分と遅い足なんだな
鈍さだけが光ってる
そんなことにも気付かず宙すらも蹴る
そして地面を蹴り忘れて沈んでいく
水玉は地面を皿にする
それともただの地面ただ落ちただけか
五秒ルールは適用しよう
しかし誰も拾い上げはしないだろう
航空に向かう車の中から
走る地面を見下しながら
ふと思ったことだ
若い割にはボクは
歳かもしれないな
地面が長靴を剥いでも
足裏が擦り切れてしまおうと
あなたには届かずに
激しく激しく
天泣が降り注ぐ