教科書を片手に
三編
●ノート●
教室の窓際から注がれる光が
顔を白く塗りたくる
目を細めて寝てみたくなる
生徒の落ち着いた口調で言う、教科書の言葉
机に伏せた生徒
本を読んでて、先生が来れば隠す生徒
ケータイを扱い、誰かにメールを送る生徒
目の下の、何も書かれていないノート
定規で慎重に切り裂いていく、一ページ
まだ小さい頃から変わらない作り方
紙ヒコーキの作り方
クチバシ、紙の翼
全開の窓の端から
なるべく直線を描くように前へ
前へと手を伸ばして
手先の紙ヒコーキを指から離した
弧を描いて真横の壁にぶつかった
少しだけ窓に身を乗り出して
また定位置の席に戻った
だるくて手のひらにアゴを置いた
生徒の落ち着いた口調で言う、教科書の言葉
ララバイ
●紙ヒコーキ●
もしもこの空を自由に飛べるなら
そう思うヒマも無いほど簡単に堕ちていくんだ
本来なら知識を書き残すために生まれてきたはずなのに
私は変な形に折り曲げられて
地面に堕ちて鼻を折り
翼を引き吊り続けて
空に舞うこともない
私はただ汚れるために生まれてきたのか
だから今、私はドブの海に浸かっているのか
ああ、あの大きな空を舞いたい
ああ
私はいつしか、ノートの一ページではなく
紙ヒコーキになっていたんだ、と
ドブの中で静かに眠る
●教科書を片手に●
生徒の落ち着いた口調で言う、教科書の言葉
私はチョークを片手に教科書を見ていた
生徒が言葉を間違えれば、それは私が正さないといけない
まだ黒板の言葉をノートに書いていない生徒がいた
私は黒板の端に避ける
タバコが吸いたい
言い終えて座る生徒
昼下がりの教室
静かな吐息が沈んでく