風船香
一編
●風船●
風船に手紙を付けた
この手紙はどこに続くのだろうか
私は最後まで私は書かなかった
あの手紙を読んだ誰かに任すとしよう
残り何行書くつもりなのか
風船は探さない
何も探さない
風船は手紙を書く人を探さない
ただただ風に身を委ねていた
ある日風船は割れた
遥か上空で羽ばたく鳥に割られた
恐るべしは「パアアンッ」の木霊
強い音
それはそれは凄い音
それは海の真ん中に落ちていった
風船は揺れていた
遥か上空の更に上空を見つめながら
その手に大切なメッセージを持ちながら
時に小さく
時に大きく揺れていた
気圧に耐えきれず割れた
しかしまた浮かんでくるのだ
風船が指の中で踊るのだ
今にも割れそうで割れそうで
大切に抱きかかえるようにと頑張ってた
ある日風船は割れた
綺麗な丸い膨らみは
綺麗に割れた
綺麗な夢を込めた
綺麗な人は
綺麗な風船とともに
綺麗な地上へ落ちていく
ある日風船は手紙を持っていた
その手紙を読むことで
仄かに人の心も読んでいく
風船は揺れるだけ
少しの言葉も知らないで
手紙から読み取れたものは
風船の中に紛れていった
風船は膨らみすぎて
割れてしまった
フーフー
ふーーーーーーーーーーーーーー
ふーーーーーーーーーーーーーー
ふーーーーーーーー
充分だろう
もう充分だろう
そう思って君は手紙を読むんだろう
何度となくこの時を繰り返し
重ねて
さあ割れよう