背負った物
一編
●荷を負う●
友を一斬り
命を奪う
未知の世界へたどり着く
初めてみる夢は白い夢
白い大地に道化師一人
俺の目の前に立っている
道化師のジャグリング
回っているのは鋭利なナイフ
「キミが最初の相手ダネ?」
道化師の笑い声
うふふと奇妙な笑い声
それがそれの笑い声
奴もまた
命を奪って此処へ来たのだろうか
顔は見えずに仮面に隠す
仮面の表情はこれ以上なく冷たいモノ
最上位の『微笑み』を浮かべて消える
視界から一瞬消えた道化師
消えたのではなく見逃した
俺はそいつを見逃した
次に見た風景は
誰かの腕が空を飛ぶ絵だ
下を向けば道化師がいて
道化師は仮面の中から溜め息を漏らす
誰かの腕は飛んだ
俺の左腕を見つめようと
視線を斜め下に落とした
しかし其処には腕は無く
血の滝が地面を赤く染めていた
白い大地に落ちた腕
その腕は紛れもなく俺のモノだった
一瞬の反応の遅れ
汚い叫び声に血みどろの鈍足
ゆっくりと前に倒れ込む肉体
血の放射は何も止めぬ
道化師は仮面の上で笑っていた
大地に響くは笑い声
散々に渇いた笑い声
片手に凶器を持った俺
道化師に恐れながらも
凶器を前に振り下ろす
凶器は心を映している
恐れながら描いた斬る道は
ガタガタに震えて怯えていて
道化師の仮面にはじかれた
道化師は笑った
俺の姿に抱腹絶倒大爆笑
苛立ちと苛立ちが混ざって壊れる
友をあっさりと斬り捨てた凶器は
細い細い枝を地面に叩きつけたときのように
あっさりと折れた
意識も折れた