小さな旅
一編
●小さな旅●
久々に友達ん家に泊まった
しかし
蚊の音が五月蝿いので家出した
友達が寝てる間に家出した
あと私は一人で寝ないと落ち着かないからだ
あと何かが面倒になったからだ
『泊まり』は性に合わなかったのだ
外は暗かった
風は扇風機の強よりも涼しく
星は線香花火のように輝いていて
川の音はヒトよりもよっぽど強かった
私はどこに行こうか迷った
このまま我が家に帰る選択は有る
しかしそれではつまらない
どうせならば知らない道を歩んで行こう
いや走っていこう
この自転車とともに
ケータイを見る
2時31分
とりあえずはこの眼前の
真っ直ぐな道を走ってみよう
今気付いたが
いや今思い出したが
私は半袖半ズボンだった
どおりで寒いわけだ
尿意も近いハズだ
しかし無性に何かが飲みたくなったので
近くの自動販売機でアクエリアスを買った
水筒代わりだ
ケータイを見る
2時44分
ずーっと真っ直ぐな道を進行中
広くて小さな一本道なのに
すげー怖い
すげー長い
すげー寒い
自動販売機も無く
家も無く
コンビニも無く
私を照らしてくれるのはヒトの光
電灯の光
真っ直ぐの一本道
ケータイを見る
2時55分
まだ長い一本道
きっと俺の知っている場所に着く
そう信じてペダルを漕ぐ
ああ…家に帰りたい
でもこのまま走ってもいたかった
ケータイを見る
3時5分
この小さな旅で
初めて二つの道に出会った
曲がり角ではなく二つの道に
さて次はどちらに行く?
そんなときに一方の道から
ガサガサと音がしたため
もう一方の道へ行くことにした
無茶な旅でも安全第一
ケータイを見る
3時16分
地元の有名な川を通った
でかい看板に書いていたのだ
初めて見た
でも暗すぎて良く分からない
暗すぎてこけそうになった
危ないところだった
ケータイを見る
3時25分
怖いという気持ちは薄れた
恐らく暗闇に慣れたからだろう
前方に街の光が見えてきた
ケータイを見る
3時34分
いや違う
なんだろうか
あの光は…
街の光ではない…あれは
車か? いや車なら
あんなに早く同じ場所を動けるのか?
いつの間にか
知っている道を走っていた
あの光はなんだったのだろうか
ケータイを見る
3時47分
旅中では初めての
コンビニとの出会い
思わずジャンプを立ち読み
自分の甘さに呆れながら
ケータイを見る
4時20分
あとはただ
走るだけ
家にたどり着けたなら
速攻で寝よう
思いっきり寝よう