風が吹いてん。
三編
●風が吹いてん●
柔らかくて大きな
クッションみたいな風が
小さな手のひらを包み込んでくれた
田んぼの草原が揺れていて
それに対して風は香る
この瞬間をと
二つの手のひらが額縁を作り
草原の一部を陣取りする
ああ
この風を
写真に収めることが出来たなら
だから私は
風を見つめながら
目を閉じるのだ
目には見えぬ触感を
微かで良いから感じようとして
写真に写らないならば
せめて貴方の言葉を込めておこう
風香よ
風の季節に現れし奇跡
●行進せよ●
たくさんの人々が
足を下げては上げていく
大行進に砂が舞う
左の足を1のとき
右の足を2のときに
キレの良いリズムを崩すでない
1・2・1・2・1・2・1・2
駆けるのではなく踏みしめよ
足の痛みは気にするな
私だって充分に痛いのだ
だがだからこそ
駆けるのではなく踏みしめよ
誇りを持て
胸を張れ
ギザギザな光陽が
鬼神の眉間にシワを寄せる
日差しにダルさを訴えてやれ
それでも私は頑張ると
ガンを垂れてやれ
駆けるのではなく踏みしめよ
1・2・1・2・1・2・1・2
●草むしり●
ふんふーん♪ ふーん♪
口笛を吹きながら
みなぎる事の無い
力の指先で
根元をずず〜っと引きちぎる
ふんふーん♪ ふーん♪
適当にダラダラと
話をしながら抜いていく
そして聴こえるBGM
先生の怒った声
ペチャクチャと喋んないで抜けえ!
そして聴こえるBGM
どこかの誰かの鼻歌よ
ふんふーん♪ ふーん♪