偽愛
二編
●抱きしめるは…●
わたしが抱きしめるから
彼女もまた応じて抱きしめるのだ
それが仕事なのだ
ずっと遠くまで聞こえるであろう…
わたしを呼ぶ仮の声
嫌いではないから応じてみよう
わたしも彼女を助けよう
呼ぶ声が誰であろうと
それは彼女の声なのだ
彼女に会えるなら
彼女に会えるなら
魔物や悪魔やナイトメアー
全てを斬って彼女のもとへ
わたしの足はカクカクとしている
まるで力が無いのだ
地べたを歩く必要が無いからだ
彼女は座っている
力無く座って待っている
わたしはそれを知っている
シナリオ通りに動いてるから
それでもわたしは助けたい
愛してもいない彼女を
わたしにしか助けられない
わたしは叫ぶ
誰かの声で
彼女に向かって愛を叫ぶ
愛の無い愛を叫ぶ
彼女は立っている
力無く立って待っている
次の展開
待ち焦がれているのは視姦者達
わたしは彼女を抱きしめる
強く強く抱きしめる
キシッと音をたてながら
●カラス●
骨の魚を噛み砕き
クチバシを削って奥へ行く
泣く泣くカラス
カーッ カーッ カーッ
漁る漁る
ゴチャゴチャと
黒と赤の境目で
血肉を吸い取り生きてゆく
カーッ カーッ カーッ
同じ並びの同じ鳴き声
ヒマなほどにキレがある
威風堂々と胸を張り
汚いものを汚いと感じながら触れる
心情ではなく外にゆけ
キライな明日にしがみつけ
ホームレスには渡さない
これは大事な生きる糧
夕暮れと共に鳴く