静寂のエリア
二編
●別れる季節●
久しぶりの朝が青く暗い
そして肌は冷たく寒い
いつからなのか
扇風機は要らなくなったのは
だからといって熱は欲さず
布団の洞穴に潜るだけだ
何も変わらない
変わるのは季節と体温
肌寒いと感じられる感覚
ありがたい
私好みに変わりつつ在る世界
このときだけの幻だとしても
ありがたいことだ
私は銀に染まらぬ最後の季節を
見届けよう
その為に木の葉に身を包もう
枯れ葉を砕いてばらまこう
道路のふりかけなんだろう
しかしまだだ
それはまだ出来ない
存在しないものを如何に壊そうと
なんのダメージもあげられないから
まだ夏なんだろう
蚊は未だに生きている
夏もまだまだ生きている
要らない熱を放ちながら
なくてはならない騒音を冷まさずに
セミはハジケている
そして夜には鈴が鳴る
●釣り人●
大きな湖の隅っこで
細い糸が湖に吸い付いた
光を利用して輝く糸
僅かなる光が糸を映す
緑色の湖
白色の糸
水中を跳ねる子供
じっと糸を見つめる子供
寝る子供
クリアな色
指先は震える
ずっと前からボロけた指先
噛むクセを付けた前歯
じっと糸を見つめる子供
微かな音もタテルナ
微弱なれど轟音
池を震わす大きな轟音
ひだまりの民
微かな音もタテルナ
銀色の釣り人
眠気が背後から忍び寄り
抱きしめてきても
フリホドカズニ
受け入れた
微弱なれど轟音
池を震わす大きな轟音
無音の中の微笑み
湖へ枝がダイブした
糸から目を背ける子供