ナツのムシ
三編
●コオロギ●
スズを鳴らした
生きているうちに
音色を果たして
砕ける前に 音をからして
夜の音色を 任せてもらう
聴き入って貰えるように
声を枯らして
歌い上げる
そして
スズを投げた
生きているように
曲を作っていく
日が来る前に 脚を削って
夜の音色を 任せてもらう
聞き入って貰えるように
声を響かせ
歌い上げる
アァ…
揺らぐ ヤツらが作り上げた 新しいヒカリ
響く 我が歌声 潰れるように
崩す 夜の暗闇 我が身を溶かす
泥くさい悲鳴は
乾いた土を 蹴飛ばして
美しさを求める音色を奏でる
●セミ●
区切る視線は
飛び退いて
しがみついて
あの場所に
下を観ずに
ハネが浮く
観てはダメだ
観たくない
命をどこに
この声に
ならば鳴らそう
この声を
響く声は
その声は?
夏の太陽の
レクイエム
オレのじゃなくて?
太陽の
つくつくほーし
レクイエム
ミーン ミン ミン ミーン
ミーン ミン ミン ミーン
●ホタル●
世界なんて 大きな規模の ヒカリじゃなくて
田んぼとか そういう小さい場所で その身を照らせるなら
それでいいと 思ってた
なのに
そんな場所すら
キミは残して くれなかった
なにが為に 居場所をとるの?
理由もなく 取っていくの?
なかったとしたら 許さない
いや
あったとしても
ヒカリを放ちながら 踊るホタルのさざめき
消し去ったのはボクら